エベレストは昔海だった(コラボ作品)
洞窟探検
2週間分の食料と持てるだけの水、若干の着替えとドライスーツ、シュラフを入れたザックを背負い、ハーネスと登攀具を身につけ、40mザイルを肩掛けにし、ヘルメットをかぶったスタイルで洞窟深くに入って2日目。大きな湖に突き当った。我々は『命の湖』と名付けた。
ビニールボートは前進基地である『途或王宮』に置いてきている。左右は取り付きが困難な壁だ。
「泳ぎが得意ですから、僕があちらに渡ります。ロープを張ってチロリアンブリッジといきましょう」
大橋の頼もしい提案が嬉しかった。ドライスーツに着替え、少量のハーケン類とハンマーを腰に、ザイルをハーネスに結わえて水の中に入って行った。強力サーチライトで行く手を照らす。
ウウーッ冷たい、と言いつつも寒中水泳には慣れているようである。
湖は幅20mほど。両岸壁にロープを固定。
吉田が、自分のハーネスのカラビナをロープに懸けぶら下がった。両足をロープに懸け、両手でロープを手繰っていく。背中が水の中に浸かっているが腕力で瞬く間に渡りきった。
吉田が腰にぶら下げていったロープとユマールを使って、すべてのザックを送った。
私の番だ。ハーネスのカラビナをロープに懸けてぶら下がり、足をロープに引っ掛けてひょいとロープの上に腹ばいとなって、手でロープを手繰っていく。ゆっくりとした進行になるが、腕力は少なくて済む。
ロープは私の重みで大きくたわみ、湖面すれすれまで下がった。というかお腹がちょっと濡れてしまったのだが。
練習でのチロリアンブリッジは楽しいものであるが、こういった状況の中では大変緊張する。後半は引っ張り上げてもらって終了。
三上はよほど慣れているのか、瞬く間にそばまでやってきた。
このロープは帰りにも使用するので、このままにして先へと進んだ。
作品名:エベレストは昔海だった(コラボ作品) 作家名:健忘真実