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エベレストは昔海だった(コラボ作品)

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 ロープの切り口に光を当てていた吉田、そして我々は誰も言葉を発しない。それが意味することが分からなかったのである。いや、考えたくなかったのかもしれない。じっと口を切り結んで切り口を見つめていただけだった。

 数秒なのか数分なのかどれくらいの時間が過ぎたろうか、大橋がぽつりとつぶやいた。
「僕たち、どうなるんだろ」
 はっ、と顔をあげて見まわした。皆もやっと気が付いたようである。
「ここを登らないと・・帰れないんだ・・・」

 300mの『大井戸』の壁はほとんど垂直になっている。ここを登るとするとハーケンやボルトなどの道具が必要で、少なくとも1カ月はかかる。いや、ここを登りきるほどの道具がない。
「三宅君と藤岡君が救助を要請したとしても・・・早くても2週間はかかるだろう」
 私は淡い光の中にいる3人に順に視線を送った。三宅が確たる口調で応じた。
「それに期待するしかありませんね」

 切断されたロープを回収して、前進ベースである『途或王宮』に戻った。
 真っ暗闇の中で車座になり、どうするかを話し合った。皆の表情は見えない。言葉の調子から、大橋と吉田はかなり動揺しているのがうかがえる。いや、私も同じだ。きっと三上もそうだろう。三上は黙ったままである。