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エベレストは昔海だった(コラボ作品)

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 成田空港には特別室が用意されていた。
 吉田、大橋のご家族には、遭難後すぐにはぐれてひとりでさまよっていたことをあらためて告げ、申し訳ないことになってしまったことを詫び、深々と頭を下げた。
 三上には親族がいないようであった。
 三宅と藤岡も待っていた。救助隊を組織するためにナムチェ・バザールに戻っている間に、洞窟上部の氷雪が温暖化の影響のため融け、土石流を発生させて洞窟入り口全体が埋まってしまったことを知った。シェルパ族のパサンが犠牲になってしまったという。私は深く頭を垂れた。

 その間ずっとハンカチを目に当てた美也子を真ん中に挟んで、孝史と強はソファに座り、私に視線を向けていた。
 髪がすっかり白くなり、皺を深く刻んだ美也子には、化粧気がなかった。
「みやこ」
 喉の奥から絞り出すような声で呼びかけると、目を赤く腫らした美也子は笑い顔を作ろうと顔をゆがませて、ただただうなずくだけだった。

「父さん、母さんはねずっと、父さんは生きてる、って言い続けていたんだよ」
「うん。父さんのことだから、岩でも石でも砕いて食べて命をつないでいるはずだって」
「働いて、働いて、僕たちを大学まで行かせてくれてさ、父さんが帰ってきた時に自慢してやるんだ、ってさ」
「美也子、すまなかった・・・」
 私は美也子を強く抱きしめ、涙でぬれた頬を胸に受け止めた。