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エベレストは昔海だった(コラボ作品)

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 廊下に出ると、ひと組の男女が目に付いた。
 目をみはり、吉田君、と呼んでいた。
 女性は、服部香奈です、と名乗った。私はすぐに理解した。
「あなたと吉田君との間の息子さんですか?」
 はい、と女性が答えると男性が頭を下げた。
「22歳になります」
 18年だと思っていたのは実は22年間だったのである。
「吉田君が探検に出た時の年齢だ。それに、まさに生き写しだ。吉田君は知っていたのですか?」
「いえ、遠征から帰って来てから告げるつもりで・・・」

 吉田が生きていることを告げたい衝動に駆られたが、そうすれば不幸になる人を増やしてしまうことに気付き、思いとどまった。
 香奈さんは、実家の援助を受けながら育ててきたという。
 しばらく頭を深々と下げたまま、罪作りな事をしてしまったのかと、心の中でわびた。

 マスコミ界は22年ぶりの生還に沸いていたが、1か月ほど過ぎると下火になっていった。
 約束通り、私の研究成果は封印している。
 しかしこの体験は記録しておきたいと思い、SF冒険小説として出版した。
 タイトルは 『エベレストは昔海だった』 である。
 

                       2011.7.8