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エベレストは昔海だった(コラボ作品)

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 時々海中に潜ったりしながら、9日目に目的地に到着した。海はやはり、古代そのままの海だった。
 海竜丸を岩に係留して、十数年ぶりの装備を身につけ洞窟の中に入っていった。鬼子との生活で得た物資も多数ある。

 洞窟内の通路や岩は丸みを帯びていた。湿って滑りやすい所もある。水が流れていた証拠である。
 1日進むと、風を感じた。進路はいくつもに分かれている。吉田が指につばを付けて差し出した。
「こっちです」
 最も狭まった通路である。いくつもの小さな滝の跡を、ザイルに繋がって遡行していった。


 涼やかな風が吹き込んでいた。
 空には星が瞬いている。天の川がよく見えた。
 おおーっ、と全員から感嘆の声が上がった。
 草の匂い、土の匂い、“生”の匂いが充満している。虫の音が聞こえる。
 出口は崖になっていた。20mほど下方には草原が広がって見えていた。川があったらしいが、干上がってしまったのだろう。

 私はひとりずつと握手をし、抱き合った。
「ありがとう! 君たちのおかげだ」
「いや、まだですよ。ここがどこらへんに位置するのかが分かりませんから」
「そうです。夜が明けてから先生を下ろすことにしましょう」
「すぐに人と出会うことができればいいのですが」

 空が白み始めるまで会話が途切れることはなかった。
 それぞれの心には18年の思いが詰まっている。さらに遭難するまでの数年間、探検の準備に費やした時への思いがあった。
 ザイルにぶら下がって崖を降りた。
 彼らは、私が見えなくなるまで手を振っていた。

 干上がった川に沿って進んだ。歩いては休み、水溜りがあればそれを飲んだ。持参した光苔はすでに無くなっている。草を食べた。
 翌日の朝、羊を連れた人間に出会うことができた。そして私は気を失った。