エベレストは昔海だった(コラボ作品)
海へ
「おお君たち、手伝いかね。三宅君はいるかい」
「とうちゃんなら中にいるよ」
三宅の息子穂高が、海竜丸を指差した。
光苔をクラゲに詰め込んでいた作業をやめて、吉田の息子太陽、大橋の娘茜も共に船の中に入った。
「ほう、立派なもんだ。よくこれだけのもんが作れたな」
三宅は、クラゲの明かりを取り付けている最中だった。緑の光が、空間をやさしく包みこんでいた。
恐竜の横腹から内臓を丁寧に取り出し、骨格と皮をそのまま利用したものである。推進力は電気ウナギの電気と魚油を用いている。両方使えなくなった場合は、足で漕ぐことになるそうだ。
オープンタイプではなく、潜水ができるように改良が加えられる予定だが、それはまだ先のことである。洞窟内の海なので、天井が低い所、洞門になっている所が予想されるからである。
「先生みて! ここから外が見えるんだよ」
太陽が首の骨格を登りつめて、目のあるところから外を覗いている。
「いずれはここから遠隔操作で見られるようにしたいんですがね。そこまで材料が揃わなくて。魚の眼でレンズを作ったんですよ」
ふん、ふんとうなずきながら内部を見て回った。
「で、いつ航海に出られそうだ?」
「あさってにしましょう」
「わ〜い、いよいよ進水だあ〜」
子供たちは大はしゃぎである。
「残念ながら君たちは乗れないよ。そうだな、一番年長の太陽ひとりぐらいなら大丈夫だろう」
「え〜っずる〜い、私も太陽と同じ頃に生まれたんでしょっ」
「ハハ、処女航海はね、男がするもんなんだよ」
訳の分からない弁明に、茜はふくれっ面を作っていた。
彼らの子供たちは大家族のように、お互いに面倒をみあって生活を共にしている。
乳児を抱いたマリアと香奈、鬼子たちが見守る中、進水式を行った。海竜丸の長く伸びた首の上の口から明かりを突き出して、周辺を照らし出している。吉田が頭部にある目から、目を凝らして前方を見ていた。障害物があれば三上に伝えて、三上は舵を切る。上陸できそうな所があれば大貝の舟で漕ぎ寄せることにしていたが、初日は試験航行でもあるため、ぐるりと回るだけとした。
作品名:エベレストは昔海だった(コラボ作品) 作家名:健忘真実