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エベレストは昔海だった(コラボ作品)

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 鬼子たちの医療技術はたいしたものである。すべてが海に生きる知恵からきているのだろうか。外傷は空気に触れなければ治りが早い、という。私の胸の痛みも和らいだ。
 大橋は2日間熱を出していたが、3日目にはケロッとして傷口も癒えてきている。
 時計はすべて壊れてしまったため、時間の経過は分からないが、体内時計に従っての時間だ。

「みなさん、ご迷惑をおかけしました。おかげですっかり良くなりました。これから『途或王宮』に戻ることができるでしょうか」
 期待と恐れを含んだ眼差しで見まわす大橋に対して、どう言えばいいのか、言葉を捜しながら告げた。
「それなんだがね・・・僕と三上君のザックが残っただけで、他は装備も食糧も行方不明で・・・おそらく途中で引っ掛かっているはずなんだが・・・戻るには水がめの壁を、ざっと15mの高さを登らなければいけない」
「僕が壁を登ってみたんだけど、難しくてね。君らふたりならザイルなしでも登りきれるかもしれないんだけど・・・」
 三上が大橋と吉田に向かって言った。
「腰の痛みはなくなってきたけど、フリークライミングはまだ自信がないなぁ」
「じゃ、ひょっとしたらもう帰れないんだ。ずっとここにいなければいけないんだ」
 大橋の期待は、大きな絶望へと変貌した。
「・・・そうだな・・・肚を決めてここで暮らすとしようか」
「海の向こう側に出口があるかもしれない。海を渡る方法を考えよう」
 三上はやはり頼りになる。決して希望を捨てようとはしない。

 大橋の回復を待って、私たちは分散して住まわされた。今までいた家は、私たちのために空けていてくれたものだった。