エベレストは昔海だった(コラボ作品)
鬼子たちに助けられた私たちは、彼らの住まいに連れて行かれた。
「ほお〜お、これはすごい! 骨組みはまさしく骨じゃないか」
クジラのような大型の生き物の骨を、魚の皮で作ったらしい革で覆っていた。
ということは床に敷き詰められているのは、はらわたを詰めた魚の皮だろうか。
吉田と大橋が動けない数日間は、三上と、数人の鬼子たちの案内で周辺を見て回った。
私たちが落ちた滝つぼは、飲料水を保存するために作った水がめらしい。また、魚のえらをフィルター代わりにして、海水を真水に換える工場があった。
大々的な工場には驚いた。緑の蛍光色をした苔(『光苔』と命名)を栽培して、主食としているのである。
推測ではあるが、それにより突起が緑の信号を発するようになったのではないか。
薄暗い洞窟の中では、光の信号がコミュニケーションの手段となる。離れた所からでも認めることができる。言葉は必要ないのだ。むしろここではお互いに離れていれば、音は反響して聞き取りにくいのだろうと思う。近くにいれば、表情や動作だけでも十分意思疎通がはかれる。
進化の過程で鬼子たちが獲得した生存戦略が、それだったのだろう。
視覚は、形をぼんやりととらえるだけらしい。嗅覚は優れているようだ。
電気ウナギと肺魚の生け簀があった。
電気ウナギのいる中に骨に刺した魚を突っ込むと、たちまち焼き魚となる。また工場の電源にもなっている。
肺魚は乾燥させると仮死状態になるので弁当代わりとなる。水をかけて生き返らせるといつでも新鮮な魚が食べられる、というわけだ。しかし、1m以上の大きさがあるので持ち歩くのが大変だろう。
海に潜ってみておったまげた。まさしく『古代の海』である。1m以上ものシーラカンスが遊泳していた。光苔をクラゲで作った袋に入れると海の中を照らすことができる。懐中電灯には遠く及ばないが。それでも海中を見渡すことができた。
ウミユリと三葉虫がうようよといる。
ウミサソリを見かけてすぐに逃げた。毒はないが、大きなハサミで攻撃されると、骨も断ち切られるほどの力がある。
鬼子がウミサソリのハサミを使って、骨や皮を加工しているのを見ていた。
4mを超すチョウザメやエイもみた。キャビアを生産して売れば、ひと財産が作れるぞ!
しかし、チョウザメは淡水で産卵するので、どこかに遡れる川があるのかもしれない。これは覚えておこう。
作品名:エベレストは昔海だった(コラボ作品) 作家名:健忘真実