エベレストは昔海だった(コラボ作品)
チカチカと点滅する緑色の光が近づいてきた。
私はもう一度気を失いたい気分になった。とても信じられないものだったから。
二足歩行をする生き物だった。私たちと違うところといえば、衣服は付けていない。代わりに毛が、頭から背中、腰回りにあり、胸には毛がある者とない者がいた。ゴールデン・レトリバーという犬種と同じ毛色にみえる。
そして何よりも異形なのは、額の上から長い突起が伸び、先端が緑色の光を発していたのである。
彼らは続々と集まって来た。口からは時々音が発せられているが、突起の光信号で意思伝達をしているのが分かってきた。
私は思い出した。
地震で出口を塞がれた洞窟の中で見つけた人骨にも突起があった。ということは、ここは雪男のコロニーだろうか。雪男は人間の女性と暮らしていたのであるから、私たちに危害を加えるような者たちではないのかもしれない。
ここは、顔の筋肉をひきつらせながらも友好に笑って見せ、滝つぼのほうを指し示した。意味は通じたようである。彼らはぞろぞろと滝つぼへ向かった。
私は彼らを総称してその突起から『鬼子』と名付けた。怖い鬼のイメージでなく、愛らしい鬼である。
私たち人間とほとんど変わらない知能と、私たち以上に平和を愛する者たちであることが、後に分かった。
湖だと思っていたのは、海だった。
海の民・鬼子は、驚くべき高い文明を有していた。
作品名:エベレストは昔海だった(コラボ作品) 作家名:健忘真実