エベレストは昔海だった(コラボ作品)
ピチャピチャ、と何かが跳ねる音がしている。
「吉田君、足元周辺を照らしてくれないか、なにかが跳ねる音が聞こえるんだよ」
「さかなだ! でっかい魚がいる!」
かがみこんでよーく見た。
「う〜ん、これはどうも肺魚らしい。生きた化石といわれていて決して珍しい種ではないが、こんな所で見つかるのは珍しいことだ。しかも化石ではなくて生きたままだ。これは学会で発表する価値のある発見だよ。うん、実にすばらしい」
「ここは本来水のない所ですよね。そんな所でも生きていられるんですか?」
「肺魚というのはね、肺で呼吸していて、乾期には仮死状態となって生き続けるんだよ。こうして水を得ると生き返る。『水を得た魚』だね。やはりエベレストは昔は海の底だったから閉じ込められたのかもしれないね」
「先生、エベレストが隆起し始めたのは5000万年前のことでしょ。いくらなんでも5000万年前に生きていた魚が、仮死状態にあって今生き返ったってことはないでしょうね」
「ハハハ・・・ともかく、生け捕りにして持ち帰りたいね」
1m以上もの大きさの肺魚に夢中になっている間に、水かさが増えてきていることに誰も気付かなかった。
そしていきなり鉄砲水が押し寄せたのである。
ワァ――ッ
私たちは抗うこともできず、水に押し流された。
作品名:エベレストは昔海だった(コラボ作品) 作家名:健忘真実