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エベレストは昔海だった(コラボ作品)

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 落胆の気持ちと、他にもきっと出入り口はある、という希望を抱いて前進を続けた。
 洞窟には天井が低い所もあり、這いつくばらねば通れない所があった。さほど大きくはない湖もあった。中を覗いても魚がいるようには思えない。生き物はほとんど見かけない。時々クモやヤスデの仲間を見かけるぐらいである。
 光を当てるときらめく、水晶の集まりがあった。数かけらをポケットに入れた。美也子の喜ぶ顔が目に浮かぶ。無事に帰れたら、のことではあるが。

「腹減った〜、宇宙食だけじゃもたないですよ。おにぎりでいいからたらふく食いたいよなぁ」
「お茶漬けが食いたい」
「やっぱり日本人だな、米が懐かしいよ」
「ああ、米の飯が一番力出るもんな」
 どうやら今晩見る夢は食べ物がいっぱい出てきそうだ。せっかく見るのであれば鮨がいいか、鍋がいいか、思い描いて寝ることにしよう。

 7日目である。今日1日進んで、明日からは元来た道を引き返すことになっている。
「おい、天井」
といって、殿にいる吉田がライトを前方の天井に向けた。天井一面からは丸い物体がつり下がっていた。
 その物体を伝って水が滴り落ちている。

 近づけるだけ近づいてその物体を観察した。
 根のようなものを伸ばし、周辺にはカビのような、苔のようなものがはびこっている。そして少数ではあるが、虫がうごめいていた。
 丸い物体に恐る恐る触れてみた。球根のようである。思い切り引っ張ってひとつもぎ取った。
「これはイモのようだね。ここを『イモのシャンゼリゼ通り』と名付けようか」
「イモ、ですか。山芋ですかね。この上にはイモ畑でもあるんでしょうか」
「おそらく野生種だね。だが、地上が近いのかもしれんよ」
「どこかに穴でもあればいいのですが」
 大橋の期待をそっけなく打ち消して言った。
「モグラか蛇の穴ぐらいのもんだろう」

「おい、天井! 何かが集まってきてる」
 天井を調べていた三上が叫んだ。『大井戸』で見たカニムシを思い出したのだろう。
「ヒルだよ。我々の体温と呼気を感知して集まって来たと見える」
「ワァーッ、落ちてきた。吸いつかれたら痛いぞ」
「これはかなわん、逃げろ! ここは『ヒルの落園』と改名だ」

 大急ぎで『イモのシャンゼリゼ通り』改め『ヒルの楽園』を突き抜けた。
 地上では雨が降っているのか、天井から滴る水の量が増え、小さな流れを作っているところもあった。