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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第三回・弐】玉。

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悠助が何か言おうとしたその時迦楼羅の手から【悠助の宝物の玉】が落ちて乾闥婆の前まで転がっていった
「…なぁ…今の状況、かなりやばくね?」
中島がボソッと言った
「…ヤバイヤバイ…」
坂田と南、そして京助も頷きながら口をそろえた
「…これは…」
乾闥婆が転がってきた玉を拾い上げると迦楼羅と緊那羅が雷に打たれたような顔をした
「…ヤヴァイっスね…;」
坂田がその様子を見て言った
「これからどうなるんでしょうか…栄野さん」
南が手でマイクを作り京助に向けた
「…血の雨かなにかが降ると思われます」
京助が遠い目をしながら答えた

「けんちゃん! あのね! かるらんは…」
悠助が乾闥婆に駆け寄りさっき言いかけた何かを言おうとしている
乾闥婆は玉を見たあと悠助を見てそれから緊那羅のそばにある倒れている向日葵を見ると悠助を撫でた
「…迦楼羅が貴方の育てた向日葵を台無しにしてしまったんですね? すいません何しろ短気なものですから」
にっこりと笑って乾闥婆が悠助に言った
「迦楼羅」
そして顔を上げると迦楼羅に近づき
「宝珠が見つかったのならばさっさと戻りますよ」
といいながら迦楼羅の前髪を引っ張った
【悠助の宝物の玉】を【宝珠】と言っている乾闥婆を見て
「…バレてない…?」
坂田が呟いた
「…みたいだな」
中島が坂田の肩に寄りかかりながら言った
「まったく…」
乾闥婆は溜息をつくと迦楼羅の前髪に【悠助の宝物の玉】をつけた
「ほら、帰りますよ。お騒がせしました」
「髪を引っ張るな! たわけっ!;」
迦楼羅の前髪を手綱のように引っ張りながら乾闥婆は緊那羅を見
「…早くそこの向日葵、起こしてあげたらどうですか?」
と言った
「けんちゃん…あのね…」
悠助が乾闥婆の服を掴んでやっぱり何かを言おうとしている
「…大事に…してくださいね? くれぐれも失くさない様に」
悠助の頭を撫でにっこり微笑む乾闥婆を迦楼羅は黙って見た
「乾闥婆…お前…」
「さぁ、帰りますよ迦楼羅」
「いだだだ!!; 引っ張らなくとも帰るわ!!! たわけッ!;」
ギャーギャー騒ぐ迦楼羅の前髪を引っ張ってスタスタと歩く乾闥婆の様はまるで犬かなにかを連れて散歩に行くようだった
「…ペットとご主人…」
南が呟いた
「…けんちゃん…かるらん…」
乾闥婆はチラリと後ろを振り返り微笑むと迦楼羅と共にスゥっと消えた
作品名:【第三回・弐】玉。 作家名:島原あゆむ