【第三回・弐】玉。
「ホレ!」
迦楼羅が悠助に向かって何かを差し出した
「…かるらん…?」
迦楼羅に思い切り拭かれたせいで赤くなっている顔で悠助は迦楼羅を見上げた
「…さっさと受け取らんか! たわけ!」
なかなか手を出そうとしない悠助の手をとって無理矢理その手の中に【何か】を入れた
「かるらん…コレ…」
悠助の手の中にあったのは小さな赤い玉…宝珠だった
「…貸すだけだからな…なくすなよ」
迦楼羅が踵を返し悠助に背を向けた
「…乾闥婆には何て説明するんだっちゃ?」
緊那羅が静かに怒れる乾闥婆の姿を想像して迦楼羅にたずねた
「…な…んとかなるだろう;」
迦楼羅が引きつりながら答えた
悠助は迦楼羅と緊那羅を交互に見た後いきなり立ち上がると家の中に入っていった
「…さんきゅ」
京助が迦楼羅に声をかけた
「…フン」
迦楼羅が照れくさそうにそっぽを向いて鼻を鳴らした
「かーるーらーんー!」
という声と共に悠助が玄関の方から走ってきて迦楼羅の前で止まった
「…何事だ栄野弟…;」
息を切らせてでも笑顔の悠助を見て迦楼羅が少し後ろに下がった
「はいっ!」
悠助が差し出した手の中には赤い小さな玉があった
「これは…宝珠か…?」
「ううん。かるらんの貸してくれたのはこっちだよ。これは僕の宝物」
悠助がもう片方の手にある迦楼羅の宝珠を見せた
「掃除した時に見つけたんだ~…綺麗だから宝物にしたの。でね、かるらんも宝物貸してくれるから僕も貸すよ」
迦楼羅の手をとって【宝物の玉】を渡した
「…迦楼羅の宝珠そっくりだっちゃね…」
緊那羅が玉を見比べて呟いた
「これなら乾闥婆にも…」