【第三回・弐】玉。
「ウチを壊す気か! この阿呆鳥ッ!!;」
京助が怒鳴ったが迦楼羅は京助を見ようともせずヒマ子の鉢から転がり出てきた赤い小さな玉を拾い上げた
「迦楼羅…それ…宝珠だっちゃ?」
迦楼羅の拾い上げた赤い玉を見て緊那羅が迦楼羅に聞いた
「…ヒマ子さん?」
緊那羅にしがみついていた悠助が倒れたまま動かないヒマ子の名前を呼んだ
「ヒマ子さん…ねぇどっか痛くしたの? 立てないの?」
悠助がヒマ子に駆け寄る
ヒマ子から返事は無い
「京助…ヒマ子さん動かない…よ…?」
「あたりまえだ」
泣きそうな顔で京助を見た悠助に迦楼羅が言った
「その向日葵が動いていられたのはワシの宝珠の力でだからな。宝珠がなくなったとなれば動かなくなるのは当然だろう」
ヒマ子の鉢からこぼれた土が風で少し飛んだ
「じゃぁ何か? ヒマ子さんは…」
つっかけを履いて庭に降りた京助は迦楼羅の横に立ちヒマ子さんを見た
「…もう動かない…の?」
目に溢れそうなくらい涙を溜めつつ必死にそれを流すまいとしている悠助がヒマ子を抱きしめたまま聞いてきた
「…そうだ」
迦楼羅がどこか気まずそうに言った
3馬鹿も何とかこの重苦しい空気を軽くしようとしているらしいが…顔を見合わせるだけだった
「…悠助…」
緊那羅が裸足で庭に降りて悠助の横にしゃがんで頭をなでた
「う…っく…」
途端に悠助は涙と鼻水を少し流して緊那羅の服に顔をなすりつけた
「やら…ヒマ子さん喋ってくれないとやらぁ…」
ズズっと鼻水を啜りながら悠助が泣き出した
「…迦楼羅…」
悠助の頭を撫でながら緊那羅が迦楼羅を見上げた
「…そんな顔してワシをみるな!;」
迦楼羅が怒鳴る
「なぁ…なんとかならねぇのか?」
坂田が迦楼羅に聞いた
「何とかとは何だ?何とかなるならその何とかを言ってみろ」
迦楼羅が坂田に聞き返した
「あ~…例えば代用品つかうとか?どうよ?」
南が横から提案する
「ナイス南! それいいねぇ! どうよ!」
坂田が南を指差してその後迦楼羅を指差した
「ようは乾闥婆に玉なくしたことバレなきゃいいんだろ?」
京助が迦楼羅の持つ宝珠を指で突付いて言った
「…コレ…少し貸しておいてくれねぇ?」