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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第三回】金鳥・蚊取線香

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矜羯羅が指を弾くたびに小さな青い玉が緊那羅と京助めがけて物凄いスピードで飛んでくる
「何なんだよあの危ないヤツはっ!!!;」
京助はスレスレで玉をよけつつ緊那羅に問いかけたというよりは怒鳴った
「簡単に言うと【敵】だっちゃ! 京助! 右!!」
二本の武器笛で玉を弾きつつ緊那羅も叫んだ
まるでテニスのダブルスでもやっているかのように思えた
「逃げてばっかりじゃつまらないじゃない…声も聞けないし…」
明らかにこの状況を思いっきり楽しんでいる矜羯羅は【簡単に言うと敵】らしい
「簡単に言わなくても敵だと思うぞ!;」
京助は自分の運動神経にコレまでの人生の中でこれほど感謝したことは無いだろう
息は切れてきたもののまだ一度も玉に当たってはいなかった
というか一回当たれば即ゲームオーバーだろう
「…飽きちゃった」
矜羯羅が右人差し指をクッと曲げると避けた玉がカンバックして京助の左肩にモロに当たった

「!!ッ!!!;」
激痛が走った
折れてはいないみたいだがかなり痛い
「京助!!!」
緊那羅が名前を呼びながら駆け寄る
「…ってぇ…;」
肩を押さえ痛みに耐える
「京助…」
「あれ…? 緊那羅、京助守るんじゃなかったの?」
クスクスと笑いながら宙に浮かぶ矜羯羅を緊那羅が睨んだ
トントン、と頬に当てた指で口元を叩きながら矜羯羅はにっこりと微笑むと
「…声、聞かせてよ」
沢山の玉が緊那羅めがけて飛んできた
避ければ京助に当たってしまう、かといってあの数は防ぎきれない
「顔は避けてあげるね」
目をつぶった緊那羅の耳に矜羯羅のそんな声が聞こえた

「ッうぁぁぁああ!!!」

何かが何かにぶつかる音と緊那羅の尋常じゃない叫び声
これが緊那羅の悲鳴だと把握できるのに時間はそんなに掛からなかった
「やっぱりいい声してるね緊那羅…そう思わない? 京助」
顔を上げた京助が見たもの
スローモーションでも掛かっているかのようにゆっくりと倒れていく緊那羅と楽しそうに笑う矜羯羅そして自分の周りに自分を避けたかのように散らばる無数の小さい玉
「き…」

『緊那羅』、名前を呼ぼうとしたが声が出ない
かろうじて動いた右手で倒れていく緊那羅を受け止めた
「終わり? …もちょっと声聞いていたかったんだけど」
溜息をついて矜羯羅がゆっくりと京助に近づいてきた
意識の無い緊那羅を庇いつつ矜羯羅を睨む
「今度は…君の番」
矜羯羅が微笑みながら右手を挙げると京助の周りに散らばっていた玉が矜羯羅の回りに集まった
「そう…やすやすと消されてたまるかよッ!;」
まさに火事場のなんとやら
京助は緊那羅を抱きかかえるとダッシュで逃げた
左肩がキシキシと痛んだがそんなこと構っちゃいられなかった
「…足速いんだね…僕運動って嫌いなんだけど」
矜羯羅は京助の走り去った後を楽しそうに見ていた