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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第三回】金鳥・蚊取線香

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『お祭り行くなら悠ちゃんに何か買って来て』
母ハルミから2千円を貰い緊那羅と京助は薄暗くなってきた町道を港に向かって歩いた
途中浴衣姿や出店で買った玩具をもった同級生なんかにも遭遇した
「人、多いっちゃね」
港に近づくにつれ増えてくる人をみて緊那羅が言った
「っとに…この狭い街のどこにこんな数の人がいたんだか…はぐれんなよ緊那羅」
緊那羅の腕を掴んでさらに人の多い出店ゾーンに突入した
クレープ、わたあめ、りんごあめ、フランクフルトに定番のタコヤキ…威勢のいい声といい匂いがする
カラコロという下駄の音、駄々をこねて泣き喚く子供の声、射的の鉄砲発射音…
「にぎやかだっちゃー…」
京助に腕を引っ張られつつ緊那羅は周りを見て呟いた
「よそ見してッとコケるぞ」
「何買っていくか決まったっちゃ?」
わたあめ屋の前で止まった京助に緊那羅が聞く
「わたあめでいいや…おっちゃん、一つ」
「あいさ!! にィちゃんどの袋がいい?」
針金にぶら下がっているわたあめの袋にはTVのキャラクターが描かれている
「この黄色いの…この間悠助と見たっちゃ」
緊那羅が手に取ったのは黄色い電気ネズミ描かれたの袋だった
「ハイ! ポケ○ンね! 300円」
わたあめ屋のおっさんがぶら下がっていた針金からポ○モンの袋を外して緊那羅に持たせた
「毎度ありぃ~」

黄色い電気ネズミの描かれたわたあめの袋を抱えたまま緊那羅が人混みの中で足を止めた
「…? 緊那羅? どうした?」
振り返った京助が少し戻って緊那羅に問いかけると
「あ…や、なんでもないっちゃ」
と言って歩き出した
京助も何か変だと思いながらも歩き出した
出店ゾーンから抜けるとだいぶ人数も少なくなって歩きやすくなった
小走りで緊那羅の横に並ぶ
「…人に酔ったか? しゃーねーな;」
どこか元気の無い緊那羅に京助が心配そうに聞いた
「…え?」
「どこか休める所…こっちだな」
『今何か言ったっちゃ?』そう言おうとした緊那羅のその言葉を待たずに京助は近くの公園に入った
祭り会場から離れた公園は案の定誰もいなく遠くからやっぱり少し音の外れた歌声が聞こえてくる
「そこ、座ってろ」
緊那羅にベンチに座る様に言って京助が自動販売機に向かって駆けて行き手に二本の缶を持ってまた駆けて来た
「座ってろったじゃん;」
座るように再度言い黄色い電気ネズミの描かれた袋を緊那羅から取って缶茶を手渡した

「…京助…」
「あ?」
カシ、と缶を開けてベンチに腰掛けた京助を緊那羅が小さな声で呼んだ
「…京助…私は…」
何かを言おうとしている
それもちょチと複雑な事を
変なカンだけいい京助にはそれがわかった
「私は…」
俯き、缶を両手で握り締めたまま緊那羅はその先の言葉を言えずにいた
「京助…私…は…」