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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第三回】金鳥・蚊取線香

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チャルメラの音がやんで庭に下げてある風鈴の微かな音色まで聞こえるくらい静かな夕方
再びチャルメラの音が鳴り始めそれがだんだん近くなりそして遠くなっていく
「京様~! 京様~!!」
ヒマ子がまだ京助を探して叫んでいた
「…栄野…京助…」
京助は自分の名前を口に出して言った
自分がもし【栄野京助】という名前じゃなかったのならあんなヘンテコリンなことは起こらなかったのではないか
【あんなヘンテコリンなこと】があってから三日が過ぎていた
悠助の風邪も完治して明後日からは学校も始まる

『宿題なんか鞄から出してもねぇから始業式の前に誰かのを写させてもらわねぇとなー…始業式っていっても6時間だから弁当いるし…忘れないように…』

極力【あんなヘンテコリンなこと】を思い返さないようにしていてもどうにもこうにも思い出してしまう
そこから色んなことを考えてもまたその【あんなヘンテコリンなこと】へと還って来てしまう
折角買ったわたあめを台無しにされ、玉ぶつけられて殺されそうになり、クソまずい液体を飲まされ、鳥類に馬鹿にされ…緊那羅がいなくなった
弁当のことを考えていて緊那羅が浮かんだ
思えば緊那羅との出会いは弁当絡みだった
京助の頭の中では【弁当=緊那羅】という式が組み立てられそこから更に【緊那羅=あのヘンテコリンなこと】に結びついた
「…どうしてんだろ…」

【ソーマ】とかいうクソまずい液体のおかげで外傷は治ったものの結局気を失ったままで【天】に帰ってしまった緊那羅は今どうしているのか
あの独特の【キンナラムちゃん語】を初めて聞いたときの笑いのトルネード
台無しにされたエビフライ (弁当)
妙に懐かしくなった歌
実は笛だったあの棒
母さんにいいように使われている姿…
なんだかんだでまだ一ヶ月くらいしか経っていないんだと京助は日数を数えて少し驚いた
もっとずっと昔からいたようなそんな感じさえする

「何似合いもしないのに黄昏て哀愁に浸っているんですか。京助」
…何処からか声がした
どっかで聞いた事のある声だったが…気のせいだと思い返事をしなかった
「名前を呼ばれたのならばまず返事してくださいね」
突き刺さるような殺気を窓の下に感じて目をやるとと乾闥婆が立っていた
「な…一体いつから…;」
「たった今です。…怪我の具合は…大丈夫そうですね」
腕と足の薄くなってきた青痣を乾闥婆が軽く突付きながら言った
「なぁ…」
「緊那羅なら元気ですよ」
「あ…さいですか…どうも」
これから聞こうと思っていたことの返答を先に貰ってしまった
何かを言いたいらしい京助を乾闥婆は上目遣いで見ると足の青痣を強く押した
「いってぇっ!; 何すんだよッ!」
足を庇い乾闥婆に怒鳴った
「あの時言った僕の言葉信じられませんか?」
「あの時…? ってどの時だよ? ッてぇッ!;」
今度は腕をつねられて京助は涙目になる
「もう忘れたんですか。本当に馬鹿なんですね。その頭には一体何が入っているんですかたった9文字の言葉も覚えていられないんですか…ッ」
乾闥婆がつねる力を更にあげた
「痛てぇって!;マジ痛てぇっ!;」
乾闥婆が手を放すとつねられていたそこは真っ赤になっていた
「…お前コアラみたいな性格してんな…」

【コアラ=可愛いけど性格キツくて攻撃的】

京助はつねられた所をさすって乾闥婆をコアラに例えた
「僕を外国の有袋類に例えないで下さい」
今度は顔面にチョップを食らわされた
『乾闥婆には逆らうな。乾闥婆を怒らせるな』
京助の頭には乾闥婆ではなく迦楼羅の言葉が浮かんだ