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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第三回】金鳥・蚊取線香

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もう、少し音の外れたおっさんの歌声も笛の音も聞こえてこない
一体今何時なのか…辺りはまっくらでさっきまでの出来事が嘘のように静まりかえっていた
ここからじゃ時計も見えない
「…そろそろ帰らねぇと悠起きてるかもしれないしな…風呂も入りてぇし湿布貼りてぇし…それに…」
今だ気を失ったままの緊那羅を見下ろす
「…緊那羅の手当て…まぁ傷は治ったとしても体休ませないとだしな」
「緊那羅を連れて行く必要は無い」
緊那羅を抱き起こそうとしてしゃがんだ京助に迦楼羅が言った
「緊那羅は【天】に連れて帰る」
【天】から来たと言った
そう言った緊那羅が【天】に帰るのは当たり前のこと
【自分の家】から来た友達が【自分の家】に帰るのと同じこと

「緊那羅はお前を守れなかったからな。だから連れて帰る」
「だぁから緊那羅は俺を庇って…」
「たとえそうであっても貴方を守れなかったのは事実です」
また大声をあげそうになってしまった京助だったがさっきの迦楼羅の忠告を思い出し口をつむいだ

「…後日緊那羅に代わるお前たちを守る輩がまた来るだろう」
迦楼羅が自分の体より大きな緊那羅を肩に担ぎ京助に背を向け静かに言った
「な…んだよそれ…ッ!」
京助が迦楼羅の前にまわり迦楼羅の胸倉を掴んだ
「京助!」
乾闥婆がそれを止めた
「…何だよ…それ…俺は…」
乾闥婆に止められると京助は膝をつき迦楼羅の胸倉から手を放した
「…先程も言ったであろう確実にお前等兄弟を守らねばならぬと」
京助は俯いたまま黙っていた
「緊那羅は理由はどうであれお前を守れなかった…お役目御免なのはお前もわかるだろう」
迦楼羅が俯いたままの京助の横を通り過ぎた
緊那羅の髪飾りが触れた
「【天】…」
京助が呟くと乾闥婆が京助を覗き込んだ
「【天】って…どこにあるんだ?」
やっと聞き取れる位のボリュームで京助が聞いた
「…【天】は【天】にあるんです…」
緊那羅も似たような事を言っていた
「…大丈夫ですよ」
乾闥婆が俯いたままの京助の耳に小さく優しく言った
その声で顔を上げた京助の目の前で迦楼羅と乾闥婆、緊那羅の姿がまるで見えない部屋に入るように消えた