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ひとりぼっちの魔術師 *蒼の奇跡*

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僕は疑問を伝える。
一瞬こわばった表情を見せて、分からない、と君は呟く。

「僕の表情は、怖い顔?それとも、悲しい顔?」

僕の質問に、君は首を横に振る。
僕は安堵していた。
食べている時の自分の顔なんて、まじまじと見た事がない。

「どんな顔をして食べているの?僕って」
君は、
「とても嬉しそうな顔…だよ…」

と答えた。
 
僕は君の瞳の前に、手をかざして。
そっと、その二つの瞳を覆う。

「君は一人一人を大切にしたかっただけなんだよ。沢山の人を幸せにする事が、君の幸せだった時があったのも事実。でも、一人一人が幸せになる事、その表情を受け止めたかったんだよ」

君の瞳を、外の世界に解放する。
僕にできる事も、君に出来る事も。
そんなに大きな事じゃない。
だから、沢山の事を抱えると、自分が見えなくなる。
僕はまだそんな経験がないから、これはただ推測。
でも、君の話を聞いていると、そんな答えに風が気づかせてくれる。

-もう、君には見えているはずだよ。-

君の創る柔らかいパンのように。
君の創る優しいオムレツのように。
その中には、既に沢山の愛情がある。
 
-先ずは僕から。
そして…君が戻るべき世界へ。-

外の雨は止んでいた。
空からは天子の梯子が降りている。
 
ほんの少しでいいんだ。
君が自分でかけてしまった。
鍵のない目隠ししている手を。
そっと外して。
今ある光を見つめる事が出来れば。
きっと。
君ができる事が、又見えてくるはずだから。

-ねぇ、魔法をもつ君。
君にしか出来ない幸せの運び方があるんだ。
だから、怖がらないで。
曲がりくねった道でも。
その綺麗な瞳で、君は地上を、空を感じて。-

君の手が優しく僕の頭を撫でる。
又一つ、君から魔法を教わった気がした。