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CROSS 第13話 『帰投』

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   パァン!!!

 突然、大きな破裂音がした……。すると、車がガタガタと揺れ、蛇行走行し始める。
「パンクですね」
妖夢がうんざりした様子でそう言った。
 山口が助手席から乗り出して、車の様子を見てみた。
「……どうやら、さっきの骸骨戦士の骨か剣かが、タイヤをパンクさせたみたいだな」
「最悪ですね……! 予備のタイヤと交換しますか?」
妖夢は、横転したり障害物にぶつかったりしないように、必死にハンドルを握っていた。
「いや、このまま走り続けてくれ。タイヤ交換の方法は知らないし、
 めんどくさいから」
山口はのんきにそう言った……。
 すると、妖夢は急ブレーキをかけた。突然の急ブレーキに、山口は舌を噛みそうになった……。四輪駆動車は、道の真ん中で砂ぼこりをあげて止まった。
 四輪駆動車が止まるとすぐに妖夢は車から降りた。
「タイヤ交換はできないぞ」
タイヤ交換をすると思った山口はそう言った。しかし、妖夢は、タイヤ交換をするのではなく、無言のまま、道の前方に向かって走り出していた。
「オイ、どこに行く!!!」
山口の叫び声を無視した様子で、妖夢は走り続けていた。どんどん見える妖夢の姿が小さくなっていった。妖夢が車を乗り捨てて、自分の足で目的地に向かおうとしていることは、鈍い山口にもすぐに理解することができ、山口もやれやれといった感じで、四輪駆動車から降りた。そして、山口も後を追って走り出した。

 5分ぐらい走ってすぐ、妖夢に追いついた。妖夢は石壁の門の前で突っ立っていた。待っていてくれたのかと山口は思ったが、妖夢が石壁と門に張り巡らされている特殊バリアを見て、妖夢が山口を待っていた理由がわかった。特殊バリアを解除するには、山口が必要だからだ。
「おまえもタイヤ交換ができなかったのか?」
山口はそう言いながら、特殊バリア装置の制御装置に向かった。
「できますけど、山口さんの態度が気に入らなかったので」
妖夢ははっきりとそう言った。
「…………」
山口は無言で特殊バリアを解除した。
「今回の撤退を利用して、公聴会への出席をうやむやにしてしまおうという考えはありませんよね?」
「さあな」{バレてるな……}
山口はそれだけ言うと、自動小銃を構えながら、門の向こうへ入っていった。妖夢はこれ以上言っても無駄だと感じたらしく、刀を構えて、門の向こうへ入っていった。


 その門の向こうは、救出地点である『嵐の祭祀場』だった。ここも、帝国連邦軍が駐屯地として利用していたらしく、軍用車両の残骸や死体が転がっている……。
 地上に敵はいなかったが、空にエイのような悪魔が何匹も飛行していた……。ここにある対空兵器は、すべて破壊されているようだ。
 救出部隊はおらず、まだ到着していないようだった。少なくとも、ここは長居できるような環境ではないので、一刻も早く来てほしく感じた。
 山口と妖夢は、エイに見つからないように物陰に隠れる。山口はバッジ型通信機を使い、こっちに向かっているはずの救出部隊のヘーゲルに連絡を取ろうとする。自分たちの詳細な現在地と、空を悠々と飛んでいるエイに注意しなければならないことを伝えるためだ。