CROSS 第13話 『帰投』
第6章 想定外
山口たちを乗せたエアリアルは、特務艦が開けた「ゲート」から、
三原色の異次元空間に出た。ゲートは、エアリアルが出てからすぐ
に消えたが、そのゲートの後ろには、不思議なバリアで覆われた世
界が、異次元空間上に浮かんでいた。言うまでもなく、ついさっき
まで山口たちがいた世界である。全ての世界(山口が知る限りの)
は、このようにして存在していた。
ゲートを出たエアリアルは、一直線に停泊している特務艦に飛ん
でいった。特務艦の隣りには、妖夢がこの世界に来るのに使用した
幻想共和国軍の航界母艦(航空母艦の異次元空間用バージョン)が
停泊していた。その航界母艦は白系の色で統一されていたことから、
白玉楼専用の艦であることはすぐにわかった。他に艦はいなかった。
どうやら、先に帰投したようだ。
妖夢と犬走椛を、この幻想共和国の艦に降ろしに行っても良かっ
たのだが、重傷の負傷兵もいるから後でいいと妖夢が言ってくれた
ため、特務艦に帰ることになった。
特務艦まであと少しの位置にきたとき、エアリアルの横を一発の
大型ミサイルが通り過ぎていった。その大型ミサイルは、さっきま
で山口がいた世界に向かって一直線に飛んでいった。
『今のは、異次元間弾道ミサイルです』
ヘーゲルが一言そう言った。山口は腕時計を見た。ミサイル到達の
正午まであと10秒というところだった。妖夢は窓の外を見て、飛
んでいくミサイルを睨んでいた。犬走椛はカメラを構えていた。
ミサイルは、目的地の世界のすぐ近くまでくると、一瞬でゲート
を自分で開くと、そのゲートに飛びこんでいった。また一瞬で、ゲ
ートは閉じた。
そして次の瞬間、さっきまで山口たちがいたその世界は、真っ赤
に染まった。異次元弾道ミサイルが爆発したのだった……。
そのとき、悪魔魂陸上基地は、悪魔たちであふれ返っていた……。
風車が停止して、霧が基地内に流れこんできたからだった。悪魔た
ちは、おたけびを上げながら、獲物を探し回っていた。もちろん、
既に撤退した後なので、獲物は一人もいなかった。しかし、悪魔た
ちは勝ったと思って喜んでいた。
ミサイルが爆発したのは、基地の上空だった。一瞬で、炎が基地
の城を包みこみ、悪魔たちは何が起きたのかわからないまま、焼け
た……。悪魔が装備していた鎧や剣などは溶けたり、炭になった…
…。炎は城を包みこむと、その周囲に広がって、全てを焼き尽くし
始めた。他のエリアにいた悪魔たちもほとんど何が起きたのか理解
できずに、そのまま焼けていった。
そして、強烈な爆風も吹き荒れた。城をバラバラの石ころにして、
ラトリアの塔も次々に倒壊していった。全身が燃えている悪魔や放
置してあった軍用車両も根こそぎぶっ飛ばしていった。
爆発したミサイルは、世界を丸ごと破壊する威力を持つため、世
界中を焼き尽くしていった。深々度の地中や水中にいれば助かるが、
この世界には、そんな逃げ場所は存在しない……。地中深くの坑道
にも悪魔はいたが、ミサイルの炎は、ちゃんとそこも焼き尽くして
くれた……。
一通りの炎の蹂躙と、爆風の嵐が終わった後、基地があった場所
の上空には、とても大きなキノコ雲を上がっていた。そのキノコ雲
は、地獄絵図になっている世界全てを見下ろしていた……。
作品名:CROSS 第13話 『帰投』 作家名:やまさん