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ある店主の思いで。

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 で、今日は宙に浮いてて、黒髪で着物姿、で怨めしそうな表情。精気もなし。
 ついでにお線香のような香りを漂わせている。生きている人間じゃないっぽいね。
 でも、それだけでは彼女の正体は判らないので俺は鏡を見る。
 すると女の子は鏡に映らない。うん、今日は幽霊が来店した。先週も来たよな、幽霊。
 何を買っていったかな、呪いの道具だったか。まあ、いいさ、お客が何を買ったより、今目の前にいる子を接客をしなければ。
「何かお探しですか?」
「ここ、幽霊とかバケモノにも物を売ってくれるっていう変なお店ですよね?」
 変な店って言われたよ、幽霊に。俺は心で泣きながら笑顔で頷く。
「ええ、うちはどんな方にもお売りしますよ。お客さんが欲しい物があればの話ですが」
「やったー」
 女の子が弱々しく両手を上げて、にやりと笑う。
「お客様は何をお探しで?」
「水着が欲しいのですが、幽霊が着られる、水着ってありますか?」
 恥ずかしそうに頬を紅く染め、幽霊はそう問いかけてきた。
 ないからそんな水着。俺は心の中で突っ込む。
「幽霊が着られる水着ですか?」
「はーい。私の彼がとうとうこっち側に来るので……えへへへ……一緒に海に逝きたいなーって、あ。ごめんさない。いま私、逝くっていっちゃいました行くの間違いですねー」
 クスリ、と幽霊が笑った。
「……はは……そうですかー」
 どうしたらいいのか判らないので、とりあえず俺も笑い頷く。
「それで、水着ってあります? あります?」
 目をキラキラと輝かせながら聞いてくる、幽霊さん。
 どうしよう、困ったよ、俺。水着は生きてる人用だよな、どう考えても。
 だけど、水着を欲しいと言う幽霊が今この場に居るわけだし、さてどうする?。
「恐れ入りますがお客様。まずお聞きしたい事があるのですが、幽霊は水着を着用できるのですか?」
「知らないーですー」
「そうですか」
「だって、ここに来れば。みんなどうにかしてくれるって言うからー」
 ちょっとだけ悲しそうな顔をする。ああ、そんな顔しないで。
 俺の中で何かが燃える。
「そう……ですか……」
「お願いしますー」
 とにかく俺は考える。幽霊だけど彼女のために。
作品名:ある店主の思いで。 作家名:いしし