ある店主の思いで。
幽霊が着る水着、とすると水着を幽霊と同じにすれば良いのか。そうか、水着を幽霊化にすれば良しじゃないか。って、そうかって、水着が恨み辛みを募らせたまま死ぬかよ。
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」
考えれば考えるほど頭が痛い。
「無理ですか?」
無理だろうけど、なんとかするのがプロってもんだ。だけど、心折れそう。
いや、水着は物だから。確か物の妖怪って居たよね。水着の付喪神を作れば問題は解決。
たぶん。きっと、解決する可能性はかなり低いと思うが。
だが、解決策が一つでもあれば実行する。それが客商売だ。
よし、ならばとにかく急げ。
「お客様。百年後に来店というのは無理ですよね?」
「あれ? 何で百年も待つの?」
「お客様の為に水着の付喪神を作りますので」
多分作れる。多分。出来なかった場合はその時はその時だ。呪い殺されないよう謝ろう。「うーう百年かー。彼がこっちに来たらすぐに行きたいけどー。まあ死んでるしいいか」
「判りました。では、お客様のためにの水着の付喪神を作りますので100年後ぐらいに来てください」
「はーい。じゃあ、わたしはこのお店が続くように彼氏に頼もうーっと」
そう言って彼女は笑顔でぷかぷかと帰っていった。
「さて、お客さんのためにちゃんと用意しないとな……はあ」
俺は号泣した。潰れる寸前なのになんて約束をしてしまったんだ。
「どうなる俺」
次の日、俺は大家の幼馴染みと結婚することになった。
そのお陰で観連堂は続けられそうだ。
「こうして、わしの骨董品店に水着を置くことになったのだよ」
「ふーん」
その件以来、生きてる人間の客足はさらに遠のき、なぜかバケモノや幽霊達からはに愛されるようになった。
まあ、いいさそんなことよりもだ、あのお客さんの為にあと二十年ほど生きて頑張らないとな。
そう、ようやく水着が勝手に動きだしたのだからな。
(終わり)