「山」 にまつわる小品集 その弐
友情はLOVE? (BL)
1時限目。国語の授業中。良平の座席は一番後ろの通路側にある。
机の脇で湯を沸かしていた。水を入れたコッフェルをEPIガスバーナーの上に乗せていただけではあるが。
「三田君、ひっくり返さないように気をつけなさいよ」
教科書を持った田代先生が、夏目漱石の『こころ』を読みながら近づき、そう囁いて遠ざかった。田代先生は、良平が所属する山岳スキー部の顧問である。
「田代は良平に甘いよな」
終業ベルとともに先生が教室を出るや、これもすぐにいなくなった隣の席の、綾のイスを引っ張ってきて悦治が坐り言った。
「へへ・・・ちょうど沸いたとこだ、グッタイミン」
良平は教科書を机の中に押しやって、カップラーメンを2つ並べて湯を注いだ。
サッカー部の悦治は毎朝早く、自主トレでグラウンドを走っていた。時々良平もそれに付き合っている。とにかく、いつも空腹なのだ。
「仲がおよろしいですこと・・悦治! イスにおつゆ、こぼさんといてや!」
綾が腰に手を当てて睨みつけてきた。
「この前、知らんと坐ってしもたんやから。えらいめにおおたんやで」
「ごめんやっしゃぁ、スンマヘンなぁ、堪忍でっせ、すぐ食べ終わります」
作品名:「山」 にまつわる小品集 その弐 作家名:健忘真実