「山」 にまつわる小品集 その弐
宝塚ファミリーランド (エッセイ)
阪急宝塚線の終点駅、宝塚。
通称『花の道』を5分ほど歩くと『宝塚大劇場』と『宝塚ガーデンフィールズ』の入場ゲートが向かい合ってある。ガーデンフィールズの前身『宝塚ファミリーランド』は2003年4月7日に閉園となった。
阪急沿線に住む人たちにとって人気のスポットではあったが、少子化とレジャーの多様化によって入場者数が激減してしまったのである。
宝塚歌劇場のある建物とファミリーランドとは自由に行き来できた。また南側には手塚治虫記念館がある。
ファミリーランドは、動物園、熱帯植物園、電車館、人形館、ジェットコースター・メリーゴーランド・観覧車などの遊戯施設、夏はプール・冬はスケートといった、あらゆる年齢層やマニアたちにとって魅力的な所であった。こうして書き連ねているだけでも懐かしさが込み上げてくる。もっと羅列していたいぐらいに。
我が家にとってお決まりのコースは、ゲートを入った所にいる動物たちに挨拶をし、息子は電車やスピード感のある乗り物に乗り、電車館のジオラマなどで遊び、映画を見、などなど、最後には再び動物を眺めて帰る。
ここで繁殖に成功した、シンボルのホワイトタイガー。
アジアゾウのさくら。
小さく切った人参が3切れ100円で売られていたが、スーパーで3〜4本100円のニンジン2本を同じぐらいの大きさに切って持参し、投げ入れていた。鼻の先でつまみ上げクルっと丸めて口に持っていく姿が愛らしい。
時には堀の水を吸い上げてグルっと鼻を振り回して水を飛ばす。モノレールに並んでいる人たちにぶっかけていた。
アシカのプールでは魚が売られていて、プールの上から魚を突き出すと、アシカが寄ってきてやかましく要求した。
いつまで眺めていても飽きないのが、サル山のニホン猿たち。
円形のグランドの真ん中に岩山があり、グルーミングしたりくつろいでいた猿たちも、家から持参したみかんを出すと全員が注目し、若モノは岩山の高い所に上がり手を差し伸べ、貫禄のあるモノや子連れ母さんは下のほうに集まってきて、私の手に視線を投げてくる。
一袋ずつ気弱そうなモノに向かって放り投げると、さっと手に出来ればすぐに他の猿から逃げ出し、それでも強そうなモノに奪われることがあって、うらめしそうに見ていた。袋を剥いて中身だけ食べるモノもいた。
子猿たちの追いかけっこをしている姿が、微笑ましかったなぁ。岩山を転げるように走り回るんだから、その身軽さのうらやましかったこと。つい私のクライミングしている姿を重ねてしまったものだ。
最後に、
ゾウと猿に、持参した食物をやってはいけなかったのだろう、と思います。
懺悔の気持ちで今、告白します。
2011.6.13
作品名:「山」 にまつわる小品集 その弐 作家名:健忘真実