「山」 にまつわる小品集 その弐
「なんで僕たち、いきなり筑波山に来てんの」
「おお〜、ガマを捕まえて油を集めて売んのよ」
「銀さん、それは違うと思います。ガマが出すのは油じゃなくって脂汗だと思うんですけど。どちらかというと、菜種やヒマワリのほうが油が取れると思うんですけど」
「で、どうやったら捕まえられるアルか?」
神楽はやる気満々である。
「カエルの好物はハエだろ」
神楽はやぶの中に入ってかがんだ。新八がのぞきこんだ。
「ゲッ、なにやってんですか!」
「うんこにハエが寄って来たところを捕まえるアルね」
「神楽ちゃんは、まことちゃん(楳図かずお作)ですか」
「いや、アラレちゃん(鳥山明作)じゃあねえのか、似てっぞ。だがな、うんこにたかったハエなぞいらねえぞ!」
突然大きなガマが現れた。
「それ、捕まえろ」
3人が掛かっていくと、ガマが喋った。
「なにすんでぃ」
真選組の沖田総悟がカエルの着ぐるみを着ていたのである。
「お前、こんな所でなにやってるアルかぁ!」
「見たらわかるだろィ」
「わかんねーよ、お前がバカということ以外わかんねーよ」
「仲間のフリして奴に接触する作戦が台無しだ」
真選組の一団がやって来た。土方十四郎はたばこをくわえている。
「お前ら、こんな所で何やってんだ!? これは職務質問だ、ちゃんと答えろよ」
「職務って、どんな職務やってたらカエルになるんだ」
「お前に説明するいわれはねえ」と土方。真選組局長の近藤勲はあっさりと
「カエル取りだ」
のっそりと大きなカエルが現れた。全員がカエルに向かって跳びかかった。
だれかが、おそらく神楽が脳天を叩きつけてカエルはひっくりカエった。
将軍のペットだというカエルの天人(あまんと)は、筑波山女体山に今も存在する、カエル岩になったという。
銀時、新八、神楽は真選組に取り巻かれて、脂汗を流し続けていた。
2011.6.23
作品名:「山」 にまつわる小品集 その弐 作家名:健忘真実