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「山」 にまつわる小品集 その弐

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 スキーシーズンはまもなくやってくる。2年生には高校生活最後の競技会となる。そのために、早朝ランニングをし、ボッカ訓練で足腰を鍛えてきたのである。

「良平、お前スキー競技に出れるんか」
「出たいけどな・・無理やろ」
「お前、怪我した時、ボーッと立ってたそやないか。俺がシュートした直後やろ。また俺のこと見てたんとちゃうか」
「なんや、気ィ付いてたんか・・・」
「俺のスランプはやなぁ、お前のせいやねんぞ」
「・・・・・・」
「お前の俺に対する気持ち、ヒシッと伝わってきてたわ。俺、動揺してたんや。女に好かれるんやったらカッコエエとこ見せたろ思て、シュート、バンバン決めてるとこやけどな」
「・・・・・・」
「けど、男に好かれるゆうんは・・・気恥ずかしいけどやっぱ、嬉しいわ。ホンマいうとな、俺もお前のことが好っきゃねん。俺にないもんをお前は持ってる。お前にないもんを俺は持ってるんや思う。そやからお互いに引きつけ合ってるんやろなぁ」
「・・・・・・」
「俺のスランプはお前のせいやない。2月に大会がある。それに向かって一緒に頑張ってくれへんか、お前が試合に出れるように、俺も協力するから、一緒に頑張ろうや」


 良平と悦治は、リハビリの専門家のアドバイスを受けながら、共にトレーニングに励んだ。
 気力が回復力にもつながっていった。
 スキーの実地トレーニングでは後れを取った良平だったが、悦治の提案とアドバイスを受けて、映像でフォームを研究し、それをまねし自分のものとしていった。
 悦治も映像で自分のフォームを研究し、良平のアドバイスを受けスランプを脱していった。
 ふたりは、いつもふたりでいることが心地よかった。


 2月、アルペンスキー競技会。この日が良平にとってはシーズン初めての試合であり、高校生活最後の挑戦だった。
 悦治、ありがとう、としばらく目を閉じ深呼吸してから、スタート位置に立ち、ゴール地点を睨んだ。

 スタートの旗が、振り降ろされた。


                      2011.6.30