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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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ゴールドとカッパーの心理合戦(ココロしあい)

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5.



 もうじき六月になろうとしている。この時期になれば、クラス内でのグループ分けも粗方済んで、つるむ相手もだいたいは決まってくる。大概、分相応に似たもの同士で集まって過ごすようになるものだ。
 所が、我らが”女神様”は違った。
 どんな連中にも顔が利くのだ。これも日頃の行いが為す、人徳の賜(たまもの)だろう。
 「おはよう、”暁君”」
 「おー、おはよう”みわっち”」
 俺と『彼女も』、あれから何度か話す機会があって、いつの間にやら互いを名前やあだ名で呼ぶようになっていた。表向きは上手くやっている。
 …まぁ、それはさておき本題だ。
 たったの約二ヶ月で、皆に対する美和子への信頼は、既に盤石の物となっていた。
 それが、どれくらいの物かと言えば――。
 クラス委員長である美和子が、
『ごめん。ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?』と言えば。
『ああ、いいよー』
『お安いご用だよ』
『任せてよー』
 と言った感じで、みんな二つ返事で承諾するほどだ。
 俺は、この光景にある種の”不気味さ”を感じていた。
 よく考えてみて欲しい。どんな人間と言えども、合(`)わ(`)な(`)い(`)人間というのはいる。生理的、性格的に反りが合わない。相容れない、無理な人間というのが。
 そう考えれば、完璧超人の美和子と言えども、全ての人に受け入れられる訳がないのだ。
 優れた人間に嫉妬し、憎悪を向ける奴は大概どこにでもいる。そう言うルサンチマン連中が、おいそれと優秀な美和子になびく訳がない。
 ところがだよ。…アイツは、斜め上だった。
 美和子は、そうした人間とさえも仲良くなっていた。上手く懐に取り込んで、自身のコントロール下に置くことに成功していたのだ。
 ――その手管は実に単純だ。
 相手の存在価値を認め、自尊心(プライド)をくすぐってやればいい。
 青春期の”子供”は、自身の有用さを殊更アピールする。自分が優秀であると、他者より優れた価値ある人間であると認めて欲しくて。己の能力や知識をひけらかして、やおら自慢するものだ。
 そうした連中を”手なずける”には、イエスマンの如く彼らの言葉に賛同し、賞賛を浴びせてやればいい。それだけで、彼らの儚く浅い、ちっぽけな自尊心は満たされる。
 つまり、美和子はそうした手管で連中を懐柔したわけである。
 なんという強かさ!なんという計算高さ!
 そう考えると、美和子と初めて喋ったあの日。彼女がペンケースを忘れたのも、今まで接点が無かった俺と接触する切っ掛けを作るために、ワザとやったことだったのかもしれない。

(美和子は、失踪事件に何らかの形で関わっている。断定するにはまだ材料は少ないが、彼女のあの”特異性”は『武器』だ…。彼女と話した後、俺はすっかり本来の目的を忘れてしまっていた。彼女に対して何の疑問も抱かなくなっていた…。彼女は何らかの”方法”で、人の心をコントロールしている…。自分に対して疑念を抱かせないように、何(`)か(`)を(`)し(`)て(`)い(`)る(`)!皆の行き過ぎた恭順っぷりもそう考えれば合点がいく!!
おそらく、ここまで気が付いている人間はいない。皆、なんの疑念も抱かず幸菜川美和子という人物を諾々と受け入れている。悪意も底意も無く献身的に人に尽くす”いい奴”だと、完全に信じ切っている!…不味いなぁ、なにか不味い空気を感じる…)
 俺が皆みたく、手放しで美和子のことを賛美出来ないのは、一匹狼的な捻くれた野党根性って訳じゃない。彼女に嫉妬しているわけでもない。どちらかと言うと俺は、(人間的な意味で)美和子が好きだ。
 ただ――言っているのだ。
 俺の嗅覚と直感――知識と経験が言っているのだ。

 美和子は”黒”だと…。