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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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ゴールドとカッパーの心理合戦(ココロしあい)

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4.



 今更だが、白鴎学園では今、事件が起こっている。
 幸菜川美和子がやってきてからはや一月半。この間、そうとは気付かないレベルでちらほらと――生地に刺繍針でぽつぽつ穴を開けるように目立たず…、学園の生徒が数人、謎の失踪を遂げていた。
 所が、誰もそれを疑問にも感じていない。気が付いてすらいない。
 皆、何事もないように過ごしている…!
 不自然な事であるはずなのに…。

 つまり、俺が『彼女』を疑っているのはそ(`)う(`)言(`)う(`)こ(`)と(`)だ。

「不自然だと思わないか?この一月半で八人だ。八人消えているんだ。自主退学とかそんなじゃなく、何の前触れも無く唐突にな」
 俺は、八歳に事件のことを話してみた。
「まぁ言われてみればねぇー。なんの脈絡もなくか…。んー、不思議だねぇ」
「だろ?知り合いでも無い人間と言えど、長期間欠席が続けば不自然に思うはずだ。所が、誰も話題にすらしない。そうした噂も聞こえて来ないしな」
「話題にするまでもないってことじゃない?皆淡泊なんだよ。自分と自分の周りの事しか興味がないんだろうねぇ。もしかして暁、この事件のこと調べてるの?」
「ああ、まぁなー。ただの興味と暇つぶしさ。首を突っ込み過ぎる気はないけどよ」
「へぇ、以外だね。面倒は嫌いなんでしょ?」
「へっ、うっせぇよ」と、ニヒルに笑い飛ばして言う俺。
「もしかしたら暁の勘違いかもよ?実は、そんな大した理由じゃなかったりしてね」
「だと良いんだがよー…」
 俺が被害妄想狂のドンキホーテってオチならな。


 四時限目。科学の授業は、実験との兼ね合いもあって科学室で行われる。授業が終わり、一番最後に席を立った俺の目にある物が映った。
(ペンケース…、誰かの忘れ物か?)
 幸菜川美和子が座っていた席にナイロン製のペンケースが置かれていた。彼女はもうすでに科学室を後にしている。
(…ったく、しょうがねぇなぁ。届けてやるかぁ)
 俺は、ペンケースを持って科学室を後にしたのだった。

 四時限目の後は昼休みと言うこともあり、『彼女』の姿は教室には無かった。
 これを切っ掛けに話す機会が出来たと、下心丸出しでぬか喜びしてたのは、この際無かったことにしておいて欲しい。
 機会を逸したことを少々、残念に思いつつも。
(机の上に置いておけばいいか)
 そう結論を出し、俺はペンケースを彼女の席に置いて立ち去ろうとした。
「あ…!」
 柔らかい声が聞こえた。
 後ろを振り返ると、『彼女』が呆気にとられた表情をして教室の戸口に立っていた。
 皆の”女神様”、幸菜川美和子が。
 彼女は、カツカツと俺の側まで寄ってきて。
「もしかして、わざわざペンケース持ってきてくれたんですか?」
『彼女』は、自分よりも頭一つ背の高い俺を上目遣いで見てそう言った。
 青い目が俺を見つめる。
(ぉおお…。間近で見ると…やっぱりキレイな子だな…)
 ヤヴァイ。凄い破壊力だ。思わず『きゅん』となってしまう。それに、ほのかにいい匂いがする。儚げな鈴の音のように静かな芳しさだ。
 内心は心臓バクバクだったが。俺はクールを装い。(めっちゃ頑張りました)
「ああ、やっぱり幸菜川さんのだったんだ。科学室に置きっぱなしだったんで忘れ物かと思ってさ。余計なお世話だったかな?」
 それに対し、『彼女』は、ううんと首を振り。
「そんなことないわ。どうもありがとう。教室に戻って来た後思い出して、科学室に取りに戻ったんだけど、無くってね。でも…よかったぁ、誰かに持って行かれたかと思った。届けてくれて助かったよ。本当にどうもありがとう」
 そう言う幸菜川美和子の仕草と表情は、本当に感謝しているようだった。
「どう致しまして。力になれて何よりだよ。じゃ、俺はこれで」
 俺は、自分の席に戻ろうと身を翻して――
「あ、ちょっと待って」
 ――『彼女』に呼び止められた。
 振り返り、目をぱちくりさせている俺を見て、『彼女』はニコリと笑い――


学生食堂。

(…視線がイテェ…)
 皆が、『俺(`)た(`)ち(`)』を見ていた。
 赤毛のチャラ男(自虐)と、金髪碧眼の美少女(公認)が面と顔を突き合わせて食事をしている珍妙な光景に、皆様の好奇の視線が向けられるのは無理もないことだ。
 明らかに目立ってるよなぁ、しかし…。
 
「ねぇ、時間空いてるなら食事付き合ってくれません?」と『彼女』に誘われて、
(ダッシャーーー!見たかオラーーーー!!どんなもんじゃーーい!!)
 と、心の中でガッツポーズで大はしゃぎして、
「ああ、いいぜ(極めてクールに)フッ…」
 てな風に、二つ返事でOKした俺だが…。

(はぁぁーー…)
 ここに来て後悔するのに一分とかからなかった。心なしか胃がイタイ…。
 それに気付いていないのかどうかは、さておき。
「どうしたの、鳳君?顔色が優れないようだけれど…」
 怪訝な顔で、俺の心配をして言う幸菜川美和子さん。マジ、女神様。
 それよりもだ。これは絶好の機会だ。
 この子がどういう人間か、探りを入れる――”黒”かどうか調べるための。
 まずは、牽制がてらジャブと行こう。さぁ、どこから切り込むか…。
「ははは、そうかな?いや、なんでもないんだぜ、ホント」
「そう?それならいいんですけど…」と言って、パスタを口に運ぶ幸(`)菜(`)川(`)さ(`)ん(`)。数回咀嚼して口の中の物を飲み込んでから。
「そういえば、鳳君と話しするの初めてだったね」
「ああ、確かにそうだなぁ。帰国子女なんだっけ?幸菜川さん」
 振られた以上は話題を続けなくてはと思い、俺も返答を交えて質問を返す。
 相手の言葉を引き出すターンエンドの質問は、コミュニケーションの基本だ。
 なによりこんなキレイな子と話せるなんてそうそう無いことだ。先日まで気のないフリしてごまかしてましたが、本当にゴメンナサイ。下心あります。先生この子と仲良くなりたいです。
「そう。六年間フランスにね。去年の三月末に帰国したの」
「へぇー。仏(フランス)語って難しいよね発音。もしかしてペラペラ?」
「あはは。まぁ、ペラペラって言うほどじゃないけど。日常会話くらいは、ね」
 こいつは良い意味で予想外だった。
 儚げで貞淑そうな見た目に反して、幸菜川美和子は実にハキハキした調子で喋る明朗快活な子であった。
(裏表のない性格。同姓にも好かれるタイプだな…)話の印象でそう分析する俺。
「鳳君って、日本人離れしてる感じだけど、ダブルとかクォーターなの?」
 悪友のアイツが振ってきたなら、間違いなくリアルバウト突入の話題だが。
「あぁー。ら(`)し(`)い(`)ぜ?会ったことはないけど、祖父様(じいさま)が北欧系アメリカ人だったとかって。両親曰く、俺の赤茶毛も隔世遺伝のたまものなんだってさ」
「そうなんだ。この国じゃ大変じゃない?垢抜けてると色々とさ?」
 最初は敬語を交えて話していたのに、すっかりフランクな口調になっている幸菜川さん。流石はクォーターの帰国子女だぜ、忌憚がねぇ。
「まぁな、ちっこい頃は色々と絡まれたりしたなぁ。でもこれくらいの歳になると、良い感じの『ハク』になって脅しが利くようになる。今となってはありがたいね」