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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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ゴールドとカッパーの心理合戦(ココロしあい)

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2.



 少々、時間を遡ろう。今から約二ヶ月前、二年生に進級してから二日後のことである。

 灰褐色のシャツに赤いネクタイ。白いブレザーとスラックス。ブレザーの袖と襟のVライン部分は黒い生地になっており、縁取りには黄色のラインが入っている。それが、白鴎学園の制服デザインであった。
 ちなみに女子のブレザーは、燕尾服の様なデザインで、後ろの裾が二股に割れてヒラヒラしている。下はプリーツスカート(白)だ。
 俺はネクタイをだらりと緩めて、Yシャツの裾を出して着崩している。こうやってガラが悪そうにしていれば、自身の人相も相まって(優等生だらけのこの学園では)あまり人に絡まれないだろうと言う計算だった。
「おはよう暁。今日も、無事に登校出来たようだねぇ」
 教室の席に着くなり、俺へ暢気な調子で挨拶してきたのは、友人の神(しん)童(どう)八(やつ)歳(とせ)だった。人畜無害そうな『天然風優男』と言う二つ名がピッタリの男だ。
 ちなみに俺の席は、窓際の一番後ろ。教室の隅だ。目立つのは嫌いだからね。
「おはよーっす。つかよー、何かあった方がいいみたいな口ぶりだなぁ」
「とんでもない。変わらぬ日常、変わらぬ友人のチャラ男ッぷりに感謝してるんだよー」
「チャラ男いうな。この髪とルックスは生まれつきだっての。言うほど気にはしてないけどなぁ、人に言われるのはちょっと良い気分じゃゃないんだぜ?」
「あー、ごめん。ほんとに何事もなくて良かったって思ってるんだよ。ああ、我が主神よ。今日も我が友は、口が悪くチャラ男でございます。マジでグラシャースいたします」
「ははは、感謝ありがとうよ。ちなみに良いことを教えてやるぜ、マイアミーゴ?」
「なんだい?」
 爽やかな笑顔を浮かべて首をかしげる優男。
「てめぇの所の主神様は、無礼に対しては無礼で贖って良いとも仰せなんだぜ?と言うわけで、今から屋上で感謝とリベンジのリアルバウトを申し込みたいんだがなぁ?」
 好戦的な笑みを浮かべて、拳をパキパキと鳴らす俺。(もちろん、フリ(``)だが)
「わぁい、暴力反対。朝から流血沙汰は主の教えに従って御法度なんだよねー」
 あははーと、朗らかに笑って”悪友”神童八歳は自分の席へと戻っていった。
 けっ、都合の良い主神様だぜ、全くよ。
 と、ほぼ同時にホームルーム開始を報せるチャイムが聞こえた。
 数分と待たずに、教室の扉が、ガラリと開き。
「今日は皆に、このクラスに新しく加わる学友を紹介しよう」
 担任の梔(くちな)子(し)凛教諭が教壇の前に来るなり言った。
「では、入って来なさい」
 梔子教諭が言うのと同時に、『彼女』は教室へと入ってきた。ブレザーの燕尾が歩調に合わせてヒラヒラと宙になびく。それが実に様(`)に(`)な(`)っ(`)て(`)い(`)る(`)。
(っ…、マジかよ…)
『彼女』の姿を見て(俺含め)皆の嘆息とも、驚嘆とも取れる声が沸きあがった。
 透き通った白い肌に、青い目。幻想じみたプラチナブロンドの髪。儚く、貞淑な容貌。その目鼻立ちの造詣は、妖精と言った言葉がぴったりと当てはまる。『彼女』の美しさは、神が作り出した遺伝子の芸術品と言っても大げさではないだろう。(おお…何言ってる自分…)
「幸菜川美和子君だ。では、挨拶を」
『彼女』は、梔子教諭の脇に立ち、肩に掛かった長い髪をさっとかき分け。
「はい。ご紹介に預かりました、幸菜川美和子です。宜しくお願いします」
 シルクのように柔らかい手触りの声だった。
(うぉぉーー…!!)
 こいつぁー…ヤ(`)ヴ(`)ァ(`)イ(`)。ヤヴァイって何が、なぁ?
 俺は、突然として訪れたセンセーションに感極まって、二つ隣の席にいる八歳に、内輪で通じるハンドサインを送った。奴もハンドサインで返す。
(おぉい、マイアミーゴ!こいつは飛んだイレギュラーじゃねぇか!!ポジティブ的な意味で!てめぇの所の主神様にマジでグラシャースですよ!?)
(あははー、言った側から日常崩壊だねぇー。てか何?身の程知らずに口説きに行こうっての?やめときなよー、君みたいなチャラ男、彼女の前じゃ息をするのも許されないよー、きっと?)
(ハハハ、こやつめ!放課後、首を洗って待ってろよ?本当のバウトって奴を教えてやる)
(ヒィィ!ごめんなさい!)
 ハンドサインで、そう泣きつく八歳であった。

 お約束通り、一時限目の授業が終わるなり、幸菜川美和子の周りには人だかりが出来ていた。
 もちろんのこと、お(`)約(`)束(`)の質問攻めタイムだ。
「幸菜川さんって帰国子女なんでしょ?以前はどこに住んでたの?」
 だの。
「わぁー、綺麗なブロンド。どうやって手入れしてるの?」
 だの。
「何かスポーツとかやってるの?部活動に入る予定は?」
 だの。
 うんざりするような(俺だったら間違いなく)、テンプレート通りの質問に彼女は。
「フランスのアルザスです。ドイツ国境付近の、のどかな土地よ」
 にこやかに。
「ありがとう。特別な事はしてません。きっと皆さんと変わらないわ」
 謙虚に。
「そうですね。マラソンとか、走るのは好きです。陸上部に入ろうかと思っています」
 丁寧に。
 
 以降も、愚にもつかない質問や取り留めの無い話題に対し、幸菜川美和子は嫌な顔一つせず
時に真摯に、時に柔和な笑みを浮かべ答えていった。(いいなぁ、キャッキャウフフできて)
 集まっているのが女子ばかりだったので、その輪の中に男子が入り込める余地がある訳もなく…。野郎共は遠巻きに指を加えて、絶世の美少女を憧憬の眼差しで見ているのだった。(興味なさそうにしている連中も、男女問わず一部いたが)