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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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科学少女プリティミュー

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 巻き込まれていけない。絶対に巻き込まれてはイケナイ臭いがプンプンしている。
 小うるさい猫人間がにゃーにゃー鳴いているのも気にせず、ミユは足早にこの店から出ようとした。
 が、突然、個室のドアが開き、中からバスタオルを体に巻いた少女が飛び出してきた!
 少女っていうか幼女はミユの顔を確認するや。
「ミユ!」
 名前を呼ばれてしまった。
 ミユには見覚えがないが、きっと関係者に違い。
 しかも、ミユには嫌な心当たりがあった。
「もしかしてママ?」
「うん」
 幼女はかわいらしく頷いた。
 がーん!
 ミユは頭を抱えてうずくまった。
 もう見事なまでに巻き込まれしまった。さすがに家族まで見捨てることはできない。
 ミニママを追って、ハチのコスプレをした店員が部屋から飛び出してきた。
「待ちなさい!」
 と言って待つくらいなら、はじめからここまで逃げて来なかっただろう。
 ミニママは小さな体を活かして店員の腕の間をスルりと抜けて、ミユの胸の中に飛び込んだ。
「助けてミユ!」
「助けるもなにも……とりあえず逃げる!」
 ミユはミニママを丸太のように抱きかかえた逃走。後ろからはハチさんが追ってくる。しかも気づけば大群。
 まるで蜂の巣でも突いたような状況。
 こんなときは決して後ろを振り向かず、とにかく逃げる。
 ミユは店内を駆け巡り、裏口から飛び出した。
 後ろからは怒濤の気配がする。まだ追いかけてくる。どこまで追いかけてくる気なのか。
「ママ、どうしようまだ追ってくるし!」
「ハチさんは黒いものに反応するらしいよぉ」
 なんかしゃべり方まで幼い。見た目だけでなくどうやら中身は若返っているらしい。
 ミユはミニママの助言を受けて考えた。
 ハチは黒いものに反応する。これはすでに実証された科学的根拠のあることだ。みんなもハチのいそうな場所では、黒いものを身につけないようにしよう。
 って、今の状況じゃ絶対に役に立たない豆知識!
 では今の状況に対処する方法とは?
 ミユはすでにテンパっていた。
「ハチの天敵は……って、そもそも後ろのお姉さんたちはハチって前提でいいわけ? コスプレしてるだけ、それとも蜂女なの、ジョーカーの怪人ってことでオッケー!?」
 こんな調子じゃ良い考えなんて浮かびそうもない。とりあえず頭でも冷やすべきだろう。
 そんなときちょうど、空から雨が降ってきた。これで頭が冷やせるもんだぜ。なんて生やさしい雨じゃなかった。
 ど・しゃ・ぶ・り!
 Go・Go・豪雨!!
 これはピンチだ。なにがピンチって、シャツが透けてブラ見えてしまうではないか。とくに夏服の女子学生が危ない。
 しかし、ピンチとは一変してチャンスとなるものだ。
 ハチのコスプレをした女たちが逃げていく。
「大変よ、雨に濡れたら飛べなくなってしまうわ!」
 あの羽って飛べるのかっ!
 ただのコスプレじゃないっぽいぞ。
 そんなわけでハチの大群からは逃げ切ったミユだったが、改めて状況を確認してみると――。
 幼女になっちゃったママ。
 叫ぶミユ。
「あ゛〜っ、ママが、ママが子供になっちゃった!」
 大問題だ。
「もしもこのままママが元に戻らなかったら……あたしってば未婚の母!?」
 すでにミユの中では、ミニママを育てるビジョンができあがっていた。
「公園デビューもういいのか……入学、入園!? お受験させて良い学校に入れなきゃいけないの!? でもあたしも別にふつーの学校だったし、お金とかかかりそうだし。てゆか、献立とか考えられないし!」
 混乱しすぎ。
 幼女がまん丸の瞳でミユを見つめる。
「ミユ寒い」
「え?」
「寒いよぉ、お風邪ひいちゃう」
「ええええ〜っ!」
 たしかに一理ある。
 こんな土砂降りの雨の中にいたら、ミユだって風邪を引いてしまう。しかも夜。
 ミユはミニママを抱きかかえて走り出した。
 走るミユ。
 Q.どこを?
 A.繁華街を。
 バスタオル姿の幼女を抱きかかえて走る若い女の子。
 絶対に不審人物として見られてる!
 でもそんな人目なんてカマってられない。今は一刻を争う事態なのだ。しかもそれに拍車を掛けるミニママの爆弾発言。
「ミユおしっこ」
 もちろんミユ=おしっこというわけではない。
 おしっこが漏れそうだという緊急事態ってわけだ。
「えええええ〜ッ!」
 ミユパニック。
 大丈夫、慌ててはいけない。
 そうだ!
「雨の中だから漏らしてもオッケー! んなわけあるかー!」
 ミユはセルフツッコミをした。
 そんなプールの中でおしっこしてもバレない的なノリが通用するわけがない。そもそもプールでもそんなことするな。もちろんお風呂でもダメだ。
 ミニママぷるぷるっと体を震わせた。
 じょぼじょぼじょぼ〜。
 ミユの体を温めてくれる……何か。
 なんだか温かい液体が服に染みこんできているような気がするよ。
 あはは、きっと気のせいだよね。
「気のせいなんかじゃなーい! ああああっ、ダメ、漏らしちゃダメ!」
 今さらミユにダメと言われても、後の祭りだ。
 至福の表情をしているミニママ。
 凍り付くミユ。
 おしっこは温かいのに、都会の雨は冷たかった。

 どうにか自宅まで帰ってきたミユ。
 とりあえずミニママにTシャツを着せて、まるでワンピースみたいな感じにさせて、自分も着替えを済ませて今後の対策を練る。
 まずは、掃除洗濯……の前に、ミニママをどうにかしなければ。まだ主婦になると決まったわけじゃない。ミニママがミユママに戻れば万事解決だ。
 ミユひとりでは解決でない問題も、誰かに相談すればどーにかなるかもしれない。
 相談する相手と言ったら、あのメガネのフィギュアオタクしかないわけだが、本当に相談を持ちかけていいものか?
 でも、事件はジョーカーがらみなわけだし、性格に問題があってもとりあえず天才であることは間違いない。
 ミユはとりあえずケータイからアインに電話をかけてみることにした。
 プルルルルル♪
 コール音が響く。
 でも、出ない。
 しばらくすると留守番電話サービスに繋がってしまった。
「ああああーっもぉ! なんで出ないの!」
 普段から部屋に引きこもってるクセに電話に出ないなんて、きっと居留守に違いない。そう思うとミユに怒りはふつふつと沸騰する。
 こうなったら直接アインのところに行くしかない。
 と思っていた矢先、ピンポーンと家のチャイムが鳴った。
「こんなときに誰?」
 ミユは駆け足で玄関に向かい、ドアスコープから外を確認した。
 そこに立っていたのは、レインコートを着た見知らぬ女性の大群。
 嫌な予感がする。
 ミユがドアを開けるかどうか迷ってると、女たちは玄関を離れ庭などに散り始めた。家の周りを占拠された。
 状況から考えてジョーカーの関係者だろう。そもそも今まで来なかったことが奇跡に近い。正確にはハサミ男(仮名)が家の中まで入ってきてるけど。
 前回の戦いでは学校に教師のフリして変装名人(仮名)がやって来た。
 もうミユには私生活なんてないのだ。