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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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科学少女プリティミュー

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 舌でぐるぐる巻きにされたメグ。これでは魔法も唱えることができない。
 迷うミユ。
 ここはやっぱり変身してメグを助けるべきなのだろうか?
 それともばっくれる?
 ミユは第三の選択肢を選んだ。
 取り出すケータイ、ここで変身番号を打ち込めばプリティミューになれるが、それはやらずに普通に通話。
「あ、もしもしアイン?」
《ワトソンだにゃー》
 き、気まずい。
「や、やっぱりなんでもない!」
 ミユは焦って通話を切った。
 まさかワトソン君が出るなんて、今朝のこと思い出しちゃったじゃないか。
 ミユがそんなことしている間にも、マジカルメグは長い舌で締め付け上げられている。
「いやぁ〜っ、早く助けてくださぁ〜い」
 涙をボロボロ流しながらマジカルメグは情けない声を出した。
 クールなマジカルメグが見せる素。
 ……あれ、デジャブ?
 こんな展開が前にあったような。前はたしか触手だった。
 長い舌はさらにマジカルメグの身体を締め上げ、バストがかなり強調された。
 やっぱりデジャブだ!
 前はミューがマジカルメグの杖を投げ渡して、それで万事解決したような気がする。
 マジカルメグの杖は?
 ミユは辺りを見回した。
「あった!」
 ミユは床に落ちた杖に手を……しまった誰かに先を越された。
 その杖を拾ったのは全身タイツの戦闘員だった。
 気づけば部屋中ジョーカーの戦闘員。
 焦るミユ。
 こうなったらやっぱりアレしかない!
「恨むならジョーカーを恨んで!」
 ミユは窓の外に飛び降りた。つまり逃走。
 すでに学園はジョーカーに占拠されていた。
 下駄箱、職員玄関などは封鎖され、生徒たちは校舎に閉じこめられている。
 正門なども封鎖され、学園の外に出ることもできない。
 しかも、あの場から逃げたミユだったが、すでに戦闘員にたちに囲まれていた。
 戦闘員程度なら生身でも……。
 ミユは熱い視線に気づいてしまった。
 生徒たちが窓から顔を覗かせていではありませんか!
 全校生徒の目がミユに注目。
 生徒の中からこんな声が聞こえた。
「がんばってプリティーミ……」
 そこまで言いかけて生徒は口を押さえた。
 ミユはハッとした。
 まさか気を遣われている?
 もしかして全校生徒に正体がバレている?
 それで気を遣って知らんぷりされていたの?
 この頃、男子生徒に人気が急上昇だったのもそのせい?
「そんな……」
 ミユはorzポーズで落ち込んだ。
 バレないほうがおかしいさ、でもさ……気を遣ってもらってたなんて、ショックだ。
 でもこうなったら肩の荷が下りた。
 ミユはケータイを構えた。
「サイエンスパワー・メイクアップ!」
 科学少女プリティミュー参上!
 生徒たちの歓声があがった。
「がんばれプリティミュー!」
「応援してるぞプリティミュー!」
「みんなミユの味方だよ!」
 最後は本名を言われた。
 もういいさ、正体なんてさ。
 戦闘員たちが束になって襲ってくる。
 ミューは破れかぶれで戦った。
 パンチ、キック、パンチラ!
 男子生徒の歓声があがった。
 なんか写メまで撮られている。
 戦闘員の山が築かれた。
 汗を拭うミユ。
「ふぅ、とりあえず一段落。次は人質の解放か、それとも見殺しにしたマジカルメグはどうなったのかなぁ……あはは」
 今になって思えばあの場から逃げる必要もなかった。だって正体だってみんなにバレてるわけだし、さっさと変身しちゃえばよかったじゃないか。
 きっと見殺しにされたメグは怒ってだろうなぁ。
 ミユがため息を漏らしていると、下駄箱から戦闘員を引き連れたカメ・レオンが出てきた。マジカルメグはロープで縛られて気絶している。
 ひとまずマジカルメグの安否を確認してミユは一安心。
「死んでたら祟られるとこだったかも。とにかく……マジカルメグと人質全員を解放しなさい!」
 強気にミユは挑んだ。
「人質は解放しない。あんたを倒したあとにも有効活用させてもらうんでね」
 カメ・レオンは嫌みたらしく笑った。
 今回のジョーカーはマジだ。大規模作戦による学校乗っ取り。ミューを倒すだけではなく、もっと大きな悪巧みがあるのか!?
 これだけ多くの人質がいれば、いくらでも活用法はあるだろう。
 身代金だってふんだくれるだろうし、政府に交渉だってできるだろう。
 どんなことを企んでいるかはわからない。だが、それを今食い止められるのはミューだけ!
「こうなたら親玉を倒す!」
 ミューはカメ・レオンに向かって走った。
 立ちふさがる戦闘員たちをなぎ倒し、構えたマジカルハンマーを!
「きゃっ!」
 ミューの手首が長い舌に掴まった!
 そのままミューが敵の手に落ちてしまった。
 長い舌でぐるぐる巻きにされた挙げ句、マジカルメグと同じようにロープで縛られてしまった。
 敵の手に落ちた二人のヒロイン。誰も助けに来てくれないのか……。
 ついにプリティミューも最終回になってしまうのかっ!?

 一方そのころ、ネオアキバタウンのどっかにあるアインの研究所。
「龍玉ぜんぜん見終わらないや。まだ細胞編も終わらないよ」
 アインは背伸びしながら自室を出てきた。
 リビングを通りかかったとき、アインの瞳にぼーっとしているワトソン君が映った。
「ワトソン君、魂が80パーセントほど離脱しているようだけど、なにかあったのかい?」
「にゃっ!?」
 ワトソン君は我に返って驚いた。そこにアインがいたことすらも気づいていなかったようだ。
 急にワトソン君は顔を真っ赤にして走り出した。
「なんでもないにゃー!」
 その反応のどこを見れば何もない?
 ありすぎ。
 アインは首を傾げてキッチンに向かった。

 捕らえられたダブルヒロイン。
 今日は助けに来てくれる者も現れないだろう。
 だってフンドシ仮面(誤字)は諸事情により使い物にならない。そんなことなど知らない二人だが、最初からフンドシ仮面になんか期待にしてない。てゆか、頭にも浮かんでなかった。
「あたしたちをどうするつもりなの!」
 ミューが叫んだ。
 続けてメグも静かに口を開く。
「すぐに殺さないと言うことは、なにか理由があるのでしょう?」
 たしかに捕らえた理由がどこにあるハズだ。
 カメ・レオンは何も答えなかった。
 ここは校庭のど真ん中。こんな場所になぜ?
 まるでカメ・レオンは何を待っているようだった。
 しばらくして戦闘員たちが次々と空を見上げた。ミューとマジカルメグも揃って空を見た。
 空の彼方から飛んでくるヘリ。しかも武装している。
 ヘリが上空から降りてくる。突風で校庭の砂が巻き上がり、ミューは思わず目をつぶった。
 ついにヘリが地上に降り立った。
 ハッチが開き、看護帽を被ったピンク戦闘員が降りてくる。
 続いてベッドが運ばれてきた。しかも点滴まで。
 ベッドに横たわるゲッソリした女。
 戦闘員たちが息を揃えて敬礼。
「キーッ!」
 戦闘員たちのこの反応。しかもピリピリした緊張感。ヘリから降りてきた者がただ者じゃないことがわかる。
 カメ・レオンはベッドの傍らに立ち、深々とお辞儀をした。
「これはこれはゲル大佐。わざわざのお越しありがとうございます」