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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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科学少女プリティミュー

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第6話_カメ・レオンだよプリティミュー!


 マラソンブームに乗っかって、ミユも美容と健康のために早朝マラソン。
「遅刻するーっ!」
 口に食パン(ノートースト)を挟みながら、ミユは家を飛び出した。シチュエーションは王道ヒロインだが、見た目も本人も必死すぎ。
 なかなか飲み込めない食パン。
 そこでミユは食パンを手で丸めて口の中に押し込んだ。女の子が決してやってはいけない食べ方だ。というか男の子もやってはいけない。
「ううっ!」
 喉に詰まった。汚い食べ方をするから天罰が下ったのだ。
「うぇ〜っ!」
 ミユは電信柱の陰に吐露した。ヒロイン資格剥奪寸前だ。
 たっぷり額に掻いた汗を手の甲で拭うミユ。
「ふぅ〜スッキリ」
 その表情はさわやかそのもの。この顔だけなら清純派ヒロインだ。
 過去をバッサリ切り捨てて、なかったことにしてミユは再び走り出した。
「ったく、なんで朝からついてないし。ママが起こしてくれないのが悪いのよ……てゆか、昨日ママ帰って来なかったみたいだけど?」
 ママが家に帰って来ないなんてはじめての出来事だった。しかも連絡なしで。
 ミユの全身を不安の風が包み込んだ。
「まさか……」
 そう、まさかジョーカーに連れ去られた?
 もしそうだったら、一刻も早くママを救わなくては!
「でも遅刻するーっ!」
 もしもの心配より、目先の心配のほうが切実だった。
 爆走していたミユの足が急ブレーキを踏んだ。
 道が分かれている。
「こっちが近道なんだけど……」
 ラブホ街なんですよね!
 できれば通りたくはないが、今は非常事態で背に腹を変えられない。
 ミユはラブホ街に突っ込んだ。
 路には誰もいない。今のうちに突っ切れ!
 ミユの瞳に映る人影。2人組の男女がラブホから出てくるのを発見。
 しかも、なんとそれは……!?
「マッ……」
 言いかけてミユは自分の口を両手で塞いだ。
 急いで物陰に隠れるミユ。そして、そーっとラブホから出てきた男女を凝視した。
 どう見てもあれは自分のママ。しかも、腕組みをしている男のほうは――ワトソン君でした!
 まさかワトソン君ったら大人の階段登っちゃったのかっ!?
 顔面蒼白で息絶え絶えのミユ。眼なんか墜ちそうなくらい見開かれている。
 まさかの光景は恐怖体験にも似た感情をミユの心に宿した。
 男女の陰が朝の街に消えていく。
 怖すぎてミユはストーキングすることができなかった。
 それよりもミユの頭の中では、目くるめく妄想で大変のことになっていた。
 もしもパパとママが離婚したらどっちについていくか!
 これは重要な問題だ。
 経済力のあるが家事ができないパパか、それとも家事も完璧オプションで新しいパパが付いてくるママか……。
 ミユはゾッとしてその場に立っていることも困難だった。
 orzポーズで絶望を背負った。
 新しいパパってつまりワトソン君だろ。ワトソン君をパパって呼べっていうのか。死んでもできない。
「ありえない……ありえない……」
 今日1日分の水分を全部冷や汗で流してしまった。アスファルトに水たまりができてしまった。
 なんとしても二人を破局させなくてはならない!
 ママとワトソン君を近づけてはならない!
 学校になんか行ってる場合じゃない!
 そうだ、二人を早く追わなくては……。
「……見失ったぁ〜;」
 今すぐ探すか、それとも……?
「よし、あたしは何も見てない!」
 現実逃避だった。
 が、一つの大きな現実を忘れると、小さな現実が顔を出す。
「あーっ遅刻!!」
 ミユは無我夢中で爆走した。悪い夢を忘れるために。

 キンコーンカーンコーン♪
 教室のドアに飛び込んだミユ。
 そのジャンプ力は10万馬力。
 教室を越えて、開いていた窓から――落ちた。
 一瞬にして生徒たちが凍り付き、ハッと我に返って窓の外を覗き込んだ。
 ここは3階だ。足から落ちれば骨折で済むかもしれないが、ミユのジャンピングポーズはウ○トラマン風。あれは絶対に腹から地面に激突している。
 クラスメートのみならず、下の教室にいた生徒たちも窓の下を覗いていた。
 地面で大の字になっているミユ。ピクリとも動かない。
 まさか死んだ……じゃなくって機能停止!?
 じゃなかった。
「……背中に突き刺さる視線を感じる……ここで立ち上がったら……」
 立つに立てない状態なだけだった。
 いつの間にか騒ぎは大きくなり。
 学校中の生徒が窓から顔を出している。
 ミユはうつぶせになったまま動けない。
 いっそのこと救急車で運ばれるのもいいが、病院で人間じゃないことがバレてしまう。というか、救急車の中で無傷なのがバレる。
 意を決してミユは勢いよく立ち上がった。
「うわっ、奇跡だわ! 3階から落ちたのに無傷なんて奇跡だわ!!」
 自作自演。
 こんなしょうもない言い訳しか思いつかなかった。
 なんかもうどーとでもなれって感じだった。
 すでにミユは生徒から変な目で見られている。
 バレーボールで殺人サーブを放ってしまったことにはじまり、イス・机・掃除用具・壁なんていくつ壊したか覚えていない。
 それでもミユのことを深く追求する者はいなかった。陰でどんなことを言われているかわからないが。
 もしかしたら恐れられていて、その話題に触れないだけかもしれない。
 とにかく、ミユの周りからは友達がドンドンどん引きしていった。というのも最初の頃で、最近はなぜかまた友達が増えはじめた。それもよく男子生徒に声をかけられるようになった。
 ミユは何事もなかったように制服に付いた砂を払い、何事のなかったように教室に帰った。
 教室に入ると、クラスメートは何事もなかったようにしていた。というより、明らかにミユと目を合わせないようにしていた。
 ミユは今すぐ泣きたい気分だった。
 でも、それを抑えて机で寝たふりをして腕の中に顔を埋めた。
 すべてあのインチキ科学者のせいだ。実力はインチキではないが、やることがインチキだ。
 そもそも正義のためにジョーカーと戦っているのではなく、世界に1つのレアフィギュアが欲しいって……なんだよその動機。
 ミユは自分の人生が末期だと感じた。
 最近の趣味と言えば、行き着くとこまで行き着いて、預金通帳に印刷された数字を数えること。数えている間は顔がニヤニヤするが、数え終わるとなんとも虚しい気分になる。
 しかもお金の使い道がないのが最悪だった。
 はじめのころは豪遊したものだが、だんだんと自分の置かれている状況に悲観してくると、お金なんかもっていてどうするんだと。
 昨日なんかはついにジョーカーの魔の手が私生活にまで。自宅にジョーカーが現れるなんて。いつまたジョーカーが家族を狙うかわからない。
 この学校にだって、パパの職場だって、どこにだってジョーカーが現れるかもしれない。
 嗚呼、サイテーだ。
 引っ越ししてどうにかなる問題だろうか?
 そんなことしてもきっと無駄だろう。
 ジョーカーと戦いませんと誓約書をジョーカー本部に郵送すれば平気だろうか?
 でも戦い意志がミユになくても、どっかの誰かさんが起爆スイッチを握っている限り、いつまでも下僕を続けなくてはいない。
 なら、いっそのことどっかの眼鏡を殺るか?