科学少女プリティミュー
……ウソつきだ!
ついにミユはマンティスシザーの正体を見切ったり!
こいつは絶対にペテン師だ。
やっぱりそうだったんだ。イケメン怪人不倫大作戦だ。
そして、その真の目的は家庭崩壊……ではなくて、ミユをジョーカーに引き入れること。ミユを倒すだけなら、いくらでもチャンスはあったハズだ。それを母親から陥落させたのは、肉親から攻めたほうがミユの心が揺らぐと考えたのだ。
怖ろしい、今回のジョーカーは怖ろしいぞ!
今までの変態怪人どもとは一味も二味も違う。
ミユママは今やジョーカーの仲間であり、人質でもあるのだ。
マンティスシザーとミユママはベッタリくっ付いている。
手出しできないじゃないですか!
プリティミューに変身することすらできない。母親の前で変身するわけにはいかない。
だって、あんな衣装着てるとこ見られたくないもん!
どうするミユ!!
ミユが世界崩壊なんかよりも切実な家庭崩壊の危機を迎えているころ、アインの研究所ではワトソン君(人間モード)が発射の準備を整えていた。
発射!
星空に打ち上げられたワトソン君。フンドシが風になびいてヒ〜ラヒラ。
ヒューン!
そのまま地上に向かって落下。パラシュートなし!
屋根を突き破って激突、ドーン!
その一部始終をミユは目の前で見ていた。
いきなり屋根を突き破って落ちてきた変態が、見事マンティスシザーに激突!
マンティスシザーは泡を吐いて気絶。
ワトソン君は床にめり込んで動かない。嗚呼、きっと死んだね♪
ミユママは何が起こったのかわからず、目を白黒させて気を動転させてしまっている。
ワトソン君がムクッと生き返った!
ゾンビかっ!
全身青アザだらけのワトソン君がカッコよくポーズを決める。
「ひょっとこ仮面ただいま参上!」
出たーっ、ふんどし仮面!(誤字)
が、ひょっとのお面がない。どうやら落下の衝撃でどっかに行っちゃったらしい。
素顔のひょっとこ仮面を見たミユママ。瞳が輝いた。
そこにいたのはふんどし姿の美青年。
身体はしなやかに引き締まってるのに、顔は童顔で主婦の心をくすぐる。
年下の可愛い彼!
母性本能をくすぐられまくり!
ミユは思った。これはチャンスだ!
「ワトソン君、そのままママを誘惑して外に連れ出しちゃって!」
「にゃ?」
状況を理解できないワトソン君だったが、ミユママのほうからワトソン君の手を握って来た。
「ぼく大丈夫? ひどい怪我、わたしが病院に連れて行ってあげるわ」
ミユママはワトソン君の腕を引いて消えてしまった。
床で倒れていたマンティスシザーがなにか呟いている。
「おのれ……許さんぞ、プリティミュー!」
マンティスシザーが鋭いハサミで襲い掛かってきた。その顔は前とは似ても似つかないカマキリの顔。これがこいつの正体なのだ!
ミユは攻撃をかわし、ケータイを取り出した。
「サイエンスパワー・メイクアップ!」
白い光に包まれ、瞬く間にプリティミューに変身した。
ミユはカマキリ怪人を見ながら、なにか思い出そうといていた。
「そうだ、ア○ガールズの特にキモイほうだ!」
カマキリ男に変身したマンティスシザーは、田○にソックリだった。
なんだかミユはヤル気が湧いた。
ボコボコにしても良心の呵責を感じないで済む。
ミユは邪悪な笑みを浮かべた。
家庭崩壊の危機をもたらしたこのペテン師に対する恨み。
ミユはマジカルハンマーを振りかぶった。
「マジカルハンマー・フィギュアチェンジ!」
ぶん殴られたマンティスシザーがぶっ飛んだ。
あれれ、フィギュアにならない?
怪人をフィギュアにするためには、ミューに取り付けられた萌えメーターを溜めなくてはいけないのだ。
そ〜んなこと、ミューはちゃ〜んとわかっていた。
「あれぇ〜おかしいなぁ、一発でフィギュアにならないなら、何発も殴らないとね♪」
確信的にヤルつもりです。
ボコボコの半殺し決定!!
襲い掛かってくるマンティスシザー。
「シネーッ!」
「死ぬのはそっちじゃボケ!」
ハサミを避けてハンマーで横殴り。
また顔面を殴られたマンティスシザーがぶっ飛んだ。ついでに鼻血ブー!
怯んだマンティスシザーに容赦ない仕打ち!
「オラオラオラオアラ!」
マジカルハンマーが行ったり来たり、それに合わせてマンティスシザーの顔も左右にフリフリ。
大量の返り血(鼻血)が、ミユの白い衣装を彩る。
血の染まる甘ロリヒロイン!
一部のマニア層に受けることから、萌えメーターがいつの間にか満タンになっていた。
だが、ミューに止めを刺すつもりなんてない。ニヤッと笑いながら、まだまだ甚振るつもりだった。
顔をボコボコにされたマンティスシザーは、床に尻餅を付きながらたじろいだ。
「ま、待ってください……私は生き別れになった上司を探さなきゃいけないんです。ですから、ですからどうか見逃してください、お願いします」
「ハァ?」
「本当です、本当なんです。上司を探して町を歩いていたら、たまたまジョーカーの秘密資料にあったママさんに出会ってしまって……ジョーカー怪人として仕事を果たさないわけには、見てみぬフリをしたら、あとでどんなヒドイ目に遭わされるか……」
「最期に言いたいことはそれだけ?」
マンティスシザーを見下すミューの瞳は冷たい。冷凍ビームを発射できそうなほど冷たかった。
「ま、ままま、待ってください。私は無理やりジョーカーで働かされてるんです。そうです、脅迫されてるんです。そうだ、あ、姉が人質に捕られていて……」
「お姉さんが人質に……そんな、可哀想な……」
ミューは沈痛な面持ちで全身から力を抜いた。
その隙をマンティスシザーは狙った。
「シネーッ!」
「ウソだってわかってんだよ!」
マジカルハンマーが大きくスイング!
顔面に強烈な一撃を食らったマンティスシザーがぶっ飛んだ!
もう虫の息になっちゃったマンティスシザー。
「うふふ、まだまだ」
怖いです、怖いですよプリティミュー。
再びミューはマジカルハンマーを振り上げたのだが、急に脳ミソに謎の声が響いた。
《バイト君、ちゃんとフィギュアにするんだよ?》
それはアインの声だった。
久しぶりに使われたこの機能。そう言えば、そんな通信機能があったような気がする。
ミューは肩を落とした。
「はいはい、わかってますよーだ」
起爆スイッチを前にしたら、邪悪モードのミューもサッと醒めてしまうのだ。
「マジカルハンマー・フィギュアチェンジ!」
虫の息のマンティスシザーに止めの一撃が炸裂!
フィギュアゲットだぜ!
これにて一件落着……と、思って辺りを見回したミユが青ざめる。
「ヤバ……イ」
どんちゃん騒ぎをしたせいで、部屋の中はひっちゃかめっちゃかだった。強盗に入られたよりヒドイありさまだ。
「あはは、やっちゃった」
ミューが天井を見上げると、屋根に開いた穴からキラキラ星が覗いていた。
――秘密結社ジョーカー帝都支部。
「ゲホゲホッ」
ベッドに横になって咳き込んだゲル大佐。
なんか心労で風邪を悪化させて寝込んでしまったらしい。
作品名:科学少女プリティミュー 作家名:秋月あきら(秋月瑛)