小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

科学少女プリティミュー

INDEX|27ページ/42ページ|

次のページ前のページ
 

 瞳をキラめかせるミユママと、それを受け入れるマンティスシザー。
 そのまま二人の顔が近づき……。
「ちょっと待ったぁ!」
 ミユが二人の顔を引き離した。
 展開になんだかバラの花びらが舞っている。どう考えてもアブナイ展開だ。
 ここでミユはハッと気づいて、マンティスシザーから守るように母親の体を抱いた。
「あんたジョーカーの怪人ね!」
 そうだ、これはミユの脳内シミュレーションと同じだ。
 ジョーカーのイケメン怪人が母親を誘惑して、昼ドラ風に家庭崩壊、登場人物の精神錯乱を企んでいるに違いない!
 母親の得意料理がたわしコロッケになってしまう!!
 マンティスシザーはうつむいて、なにも言わずじっとしていた。そこにミユが追い討ちをかける。
「ジョーカーだから何も言えないんでしょ!」
「……そうです、私はジョーカーの改造怪人です」
 ついに認めた!
 やっぱり母親を堕落させる気だったんだ!
 ミユはさらにマンティスシザーを責め立てる。
「ママ、ジョーカーっていうのは悪の組織なんだよ。こいつはその一員なんだよ、悪いヤツなんだよ!」
 バシーン!
 ミユの頬が強く叩かれた。叩いたのはミユママだった。
「どうして叩くの!」
 頬を押さえて声を上げたミユをミユママはじっと見つめていた。
「ママはジョーカーのことはよく知らないわ。でも、マンティスさんのことは信じてる。この人はとても心の優しい人よ」
「ママは騙されてるのよ!」
 再びケンカがはじまりそうだった。
 そのとき、マンティスシザーが叫んだ。
「やめてください!」
 そして、すぐに声を沈めて話はじめた。
「私はジョーカーの怪人です。そして、ジョーカーは悪の組織です……でも信じてください! 私はジョーカーを憎んでいます」
 声を震わせ、怒りと哀しみを込め、マンティスシザーは肩を落とした。
 ミユはまだマンティスシザーを信用したわけじゃない。けれど、なにか心に響くものがあった。
 そして、ジョーカーを憎んでいるとはいったい?
 ミユと母親はマンティスシザーの話に耳を傾けた。
「ジョーカーの怪人はもともとみな人間です。ジョーカーは優れた才能を持つ人間を捕まえ、怪人に改造し、洗脳してジョーカーへの忠誠を誓わせるのです。私はどういうわけか洗脳が利きませんでしたが、それでも恐怖心からジョーカーに逆らうことができません。でも、私は……こんな体にしたジョーカーを憎んでいるのです!」
 そう言いながらハサミの手を胸の前に掲げた。
 今まで戦ってきた怪人……蜘蛛男、蝙蝠伯爵、レイディスコーピオン、サラセニアぁン、みんなジョーカーの被害者だった。そう考えるとミユは胸が痛くなった。
 母親はハサミの手を握った。
「たとえどんな姿をしていようと、わたしはあなたの傍にいるわ!」
 トキメキ炸裂!
「……ママさん」
 呟き、マンティスシザーはミユママを見つめた。
 再び見詰め合う男と女。
 母親のハートはファイアーしていた。
「ジョーカーだかなんだか知らないけど、あなたのことはわたしの命に代えても守るわ。だからここにいて、この家は出て行かないで!」
「それはできません……私がいたらみなさんに迷惑をかけてしまう!」
「いいよ、あなたはここにいて……」
 な、なんですかこの展開!?
 プリティミューらしくありませんよ!!
 普段なら、ここで強烈なツッコミが入ったりするのだが、ツッコミすら飛んでこない。
 第3者のミユはさっきから厳しい顔をして黙り込んでしまっている。
 ミユが急に台所を出て行った。
 そんなことにも気づかないほど、ミユママとマンティスシザーは見詰め合ってます!

 ミユはネオ・アキバタウンに来ていた。
 ここに来る理由はアインに会うほかなかった。
 なのに関係ない人にバッタリ出会う。
「センパ〜イ!」
 駆け寄ってきたのはメグ。
「また会いましたね」
 なんて声を掛けてきたメグを完全シカトでミユは先を急いだ。
 研究所&自宅のドアをワトソン君に開けてもらい、ミユはアインの姿を探した。
 アインはまだ部屋の奥から出てこないのだと、ワトソン君が困ったようすでミユに伝えた。
 ミユはアインの部屋の前に立った。ドアには『使用中』のプレートが飾ってある。
「アイン、ここ開けて!」
 ドアをドンドン叩くミユ。
 どこからかアインの声がした。
「バイト君の出力と硬度じゃ壊せないないよ。この地下全体はかの有名な合成金属でできているんだ」
 有名な金属ってなんだーっ!?
 ミユはドアを殴る蹴るした。
「さっさと出てきなさいよ、話があるんだから!」
「うるさいなぁ、ボクならここにいるよ」
「えっ?」
 振り向くとアインが立っていた。
 どうやらアインは部屋の外にいたらしい。
「ボクになんの用だい?」
「もう……怒ってないの?」
「ボクが怒ってるって、どうして?」
「だって、ずっと部屋にこもってたってワトソン君が……」
「ああ、部屋にこもってたのは『龍玉』のDVDボックスを観てたからだよ。やっと『冷凍編』まで見終わって、一息ついていたところさ」
「……へぇーそうですかー」
 なんだか、自分もちょっと悪かったかもぁ――なんて反省した自分がバカだったとミユは思った。
「他に話がないならボクはまた龍玉の続きを見るから」
 自室に入ろうとしたアインの服をミユが掴んだ。
「待って、聞きたい事があるの」
 シリアス路線満開なミユの瞳に見つめられ、アインも神妙な顔つきになった。
「なんだい?」
「ジョーカーのこと」
「ジョーカーのこと?」
「あたし、ずっとジョーカーと戦ってきたのに、ジョーカーのことよく知らなかった」
 ミユは自分の見てきたこと以外、ジョーカーのことを知らなかった。
 人々に危害を加えようとしていることは確かだ。そこだけを見たらジョーカーは悪だ。
 でも、ミユが今まで見てきたモノは……。
 横○ん男、ロリコンジジイ、SM嬢、オカマ……。
 急にミユの顔色が曇った。
「やっぱりただの悪かも」
 えっ、自己完結しちゃった?
 ミユは頭を激しく振って考えを捨てた。
「違うの、ジョーカーの怪人はみんな……無理やり改造されて洗脳されてるって聴いたの!」
 もし本当にそうだったら……。
「あたし……もう戦えないかもしれない」
「ふ〜ん」
 と、アインは素っ気無く鼻を鳴らした。
 デリカシーゼロっていうか、ミユの話ちゃんと聴いてましたか? みたいな。
 アインの態度でミユの感情はジャンジャングルグルした。
 そりゃもうジャンジャングルグルした。
 怒り、哀しみ、虚無感。
 無言で立ち去ろうとしたミユの背中にアインが声をかける。
「無理やり改造とか洗脳とかどこで聞いたの? ジョーカーの怪人はみんな志願者だよ。戦闘員は時給のバイトらしいけどね」
「え?」
 戦闘員ってバイトだったのか!!
 さっきアインが『ふ〜ん』と鼻を鳴らしたのは、ミユが戦えないと言ったことにたいしてじゃなくて、無理やり改造なんてウソだよそれ、って意味の『ふ〜ん』だったのだ。
 きょと〜んっとしてるミユにアインは話を続けた。