科学少女プリティミュー
人質を捕られてしまった今、無理に抵抗したらヒドイことになりそうだ。
青ヒゲで頬擦りとか、濃厚なキッスとか、ここで言えない内容とか!
ミユが抵抗をやめて敵に投降しようとしたそのとき、店の裏から新たな変態が乱入して来た。
「ひょっとこ仮面再び参上にゃー!」
フンドシ青年再び現る。
しかも、割れたハズのお面が修復されている。
ひょっとこ仮面はアインを捕らえている戦闘員に飛び蹴りを食らわした。さらにそのまま床に落ちた!
「にゃー!!」
ひょっとこ仮面肋骨強打。
負傷したひょっとこ仮面は動けない。
だが、名誉の負傷の甲斐もあって、アインが敵の魔の手から逃げ出せた。
だが、代わりにひょっとこ仮面が捕まった。
だが、混乱に便乗してメグが逃げていた。
1匹……じゃなかった、1人が捕まって2人が逃げられた計算だ。
捕まったワトソン君の心配より、アインは自分のことが大事だった。
「ワトソン君、ボクのランドセルと白衣は?」
「ワトソン君じゃないにゃー、ひょっとこ仮面だにゃ。アインの7つ道具はないけど、ミユのケータイは見つけて来たにゃ」
アインの7つ道具?
えっ?
それって、つまり高機能ランドセルと四次元白衣のほかに、5つなんかスゴイ道具があるってこと?
しかし、そこは一切スルーだった。
ひょっとこ仮面はフンドシの中に手を突っ込み、取り出したケータイをミユに投げた。
「受け取るにゃー」
力のこもったミユの拳。
「んなもん使えるかぁーっ!」
メガトンパーンチ!!
はい、ケータイ粉々です。
ミユのパンチでケータイは見事に粉砕してしまった。
その事態を把握したミユは青い顔をした。
「ヤバッ!!」
いまさら後悔しても遅いです。
本当は不本意だけどしょうがない。ミユはこう叫んだ。
「アイン、メグを連れて逃げて!」
「めんどくさいよバイト君」
うはっ、いきなりアイン拒否。
メグさえいなければ、どーにかなるかもしれないのに!!
そのメグがいない!?
いつの間にかメグは姿を消していた。一足早く逃げたのかもしれない。
もしかしてチャンスが巡って来た?
今こそミユのパワーを発揮するときだ!
でも、変身はできません。
人質無視でミユは戦闘開始!
パンチ、キック、パンチラ見えても気にしません。
次々と戦闘員が倒れていく中、ひょっとこ仮面を捕らえている戦闘員が叫ぶ。
「キーッ!」
なんか怒ってるようだ。たぶん『動くな、この人質がどうなってもいいのか?』みたいな感じだと思われる。
ひょっとこ仮面が叫ぶ。
「おいらのことは気にせず戦うにゃー!」
男気だ。そのフンドシも男気だ。
ということで、人質の命をかるーく無視してミユは戦い続けた。
そしたら見事にひょっとこ仮面がぶん殴られた。
「にゃ!」
ミユはかまわず戦い続けた。
そしたらひょっとこ仮面にボディブロー。
「にゃ!!」
ミユはそれでも戦った。
そしたらひょっとこ仮面の顔面にパンチ!
ひょっとお面がぶっ飛んだ。その下から現れた顔は……やっぱりワトソン君(人間バージョン)。
「にゃー! やっぱり助けてにゃー!」
急に弱気だ。
すでに戦闘員はワトソン君を捕らえている1人。
そして、自称アイドル怪人サラセニアぁンが残っていた。
「むふふ、ただの学生じゃなわいねぇン」
はい、本当はプリティミューです。
ついにサラセニアぁンが動く。
な、なんとサラセニアぁンは自らのスカートをめくり上げた!
痴漢だ、変態だ、露出狂だ!!
サラセニアぁンの股間から生えている巨大なアレ。
ミユはアレを見て凍りついた。
「お、大きい……」
ミユに向けられた巨大なアレ。
もう逃げることもできない。
どうするミユ!!
なんと、サラセニアぁンの股間には大砲が付いたいたのだ!
「むふふ、このメガ粒子砲でズッコンバッコンしちゃうわよぉン!」
ミユの立ってる位置はもろ射程範囲内。しかも近距離すぎる。サイボーグにされちゃってるミユも避けられるハズがない。
こんなピンチのときに、都合よく出てきてくれたひょっとこ仮面も捕まっている。
もうミユたちを助けてくれるキャラはいないのか!?
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ、悪を倒せと私を呼ぶ……」
誰かの声が響き渡った。
「私は正義の魔女っ娘、天に代わってお仕置きよ!」
物陰から紅髪[アカガミ]のセクシー美女が現れた!
魔女っ娘を自称してるクセに、魔女っぽいのは三角帽子と悪魔の羽が生えた杖。
衣装は紅いラインの入った黒くて水着っぽいボディスーツ。ダイナマイトボディが強調され、Gカップの巨乳が揺れていた。
それを見たミユが胸を押さえて呟く。
「……負けた」
ミユはDカップだった。しかもシリコン樹脂。
突如、現れた魔女っ娘は魔法を唱えた。
「マジカルシュート!」
杖から放たれた光の弾が戦闘員にヒットして、捕まっていたワトソン君が助かった。
ずっとオレンジジュースを飲んで、くつろいでいたアインが飛び上がった。
「魔導少女マジカルメグじゃないか!」
マジカル……メグ?
ミユはマジカルメグの顔をまじまじと見た。典型的な綺麗形の顔で、ボディもダイナイマイト。知り合いのカメラっ娘メグとは似ても似つかないセクシー美女だ。
興奮気味のアインはさらに説明を続けた。
「マジカルメグと言えば、半年前に突如現れたリアルヒロインで、一部の熱狂的なファンから支持されてフィギュア化、さらにはネットで漫画になるほどの人気だよ。プリティミューはその2番煎じ、亜種ってとこだね」
プリティミューの生みの親はあんたでしょ。それを2番煎じ扱いって……。
マジカルメグはミユの顔を向けた。
「プリティミュー、ここは引きなさい」
なんか正体バレてるし!
今回の怪人はなんか強そうだ――股間のアレが特に。だからマジカルメグの言うとおり逃げちゃったほうがいいかもしれない。ミユは逃げる気満々だった。
だが、アインが反対した。
「それはできないね。プリティミューにはジョーカー怪人をフィギュア化する崇高な使命がるんだ。そして、世界で1つだけのレアフィギュアがボクのコレクションに加わるんだ!」
「そんなくだらないことのためにミューは戦っているのか……」
マジカルメグは吐き捨てるように言った。
「そんな不純な者たちに戦いは任せられない。ジョーカーは私が壊滅させる!」
声を張り上げながらメグはサラセニアぁンに襲い掛かった。
放置されていたサラセニアぁンは怒っていた。
「いきなり現れてアタイより目立ってるんじゃないわよ、メガ粒子砲発射!」
サラセニアぁンの股間から巨大な光の柱が放たれた。
杖を構えたマジカルメグ。
「Mフィールド!」
大爆発が起きた。
眼が焼けるような閃光の直後、鼓膜が破れるほどの轟音が響いた。
誰かが咳き込む声が聞こえた。
辺りは煙に包まれ、なにが起きているのかまったくわからない。
ミユは夜の街を眺めた。
「あはは、獅子舞町は夜も賑やかよねぇ〜」
――さっきの爆発で店が完全にぶっ飛んでいた。
すぐにマジカルメグの真後ろの隠れたミユ、アインはかすり傷程度で済んだのだ。
作品名:科学少女プリティミュー 作家名:秋月あきら(秋月瑛)