科学少女プリティミュー
「ふむ、あの店が開店した時期と、失踪者事件が起きはじめたのは同時期だね。イコール、このコスプレマニアは、調査を開始しようとしたボクたちに向けられた刺客ということになるね」
そこまでわかったら、あの店に乗り込むしかない――もちろんミユが。
とりあえず店の前まで来た2人と1匹。物陰に隠れながら店を監視。
相変わらず満員御礼ってな感じで、次々と男たちが誘われるように店に入って行く。
そして、この腐った果実のような臭い!
すぐにアインはこの臭いを化学分析した。
「一種のフェロモンだね。男性を惹きつける作用と幻覚を魅せる作用があるらしい」
男性のみに効き目が現れる臭い。
だからミユは平気なのだ!
だから猫のワトソン君も平気なのだ!
だからアイン――にミユは目を向けた。
「そう言えばそうだ、まだあの話に決着ついてない!」
「ボクにどんな話があるって言うんだい? 給料の交渉なら無駄だよ」
「違くて、アインがおん――」
「あーっ!!」
急にアインが叫んだ。
アインが見たのはあの店に入っていくとある男。
「あれはときめけのシナリオライターじゃないか!!」
原画家とシナリオライターいなくなったら全滅。
アインは思わず飛び出していた。
そして、捕まった。
怖い女装オヤジに連行され店の奥へ消えて行くアイン。
ミユは見なかったことにした。
「さーてと、家に帰ってマンガでもようかなぁ」
帰ろうとするミユの脚にワトソン君がしがみついた。
「待つにゃー、アインを助けるにゃー!」
「起爆スイッチのない今、あたしに怖いものはない! そんなわけでさよならぁ〜」
と、帰ろうとした矢先だった。
一眼レフカメラを持ってあの店に近づく少女の姿。ミユはその少女を物陰からじーっと観察した。
ミユはその少女の名を口にする。
「メグちゃんだ」
プリティミューの追っかけメガネっ娘で、ミユの学校の後輩でものあるメグだ。
でもどうしてこんなところへ?
まさか、ミユの後を尾行してきたのか?
メグは女装のオッサンとなにやら会話していた。
「失踪事件とこの店が関係することはわかってるんです!」
強い口調でメグは変態女装オヤジに詰め寄っていた。
ミューの追っかけばかりフューチャーされるメグだが、実はいろんな事件の追っかけカメラっ娘だったりするのだ。
しばらくミユが観察を続けていると――あ、メグが捕まった。
アインに続いてメグまでもが、店の奥に連れ去られてしまった。
こうなってしまっては良心の呵責とかで、放っても置けなくなってしまったミユ。
仕方なく救出に動き出すミユだったが、どうやって店に侵入するのか?
ミユはこれでも思春期真っ盛りの女子中学生。あんな如何わしい店に出入りできるハズがない。
ミユはじーっとワトソン君を見つめた。
「ワトソン君がんばって」
「にゃ!?」
「ワトソン君がお店に侵入して、あたしを手引きして裏口から入れてくれるとか、そういう作戦でいこうよ、ね?」
「おいらはムリだにゃー!」
「ワトソン君なら平気、水を被れば人間になれるんでしょ?」
「あんな店イヤだにゃー!!」
駆け出して逃げるワトソン君。
ミユはしっぽを掴もうとしたが、まんまと逃亡されてしまった。
1人残されたミユ。
すぐ近くには毒蛾の巣窟。
バーコードハゲ!
青ヒゲじょりじょり!
スネ毛ボンバー!
あんな地獄に正面から突っ込む勇気も根性もない。
とりあえずミユは裏口に向かった。
従業員用の裏口。
ミユは念のためドアノブに手を――。
「あ、開いた」
開いてしまった。
店内に入った途端に鼻の奥を攻撃してくる刺激臭。あの腐った果物のような臭いだ。
忍び足でミユは店内を捜索。
ミユは地下に続く階段を発見した!
怪しい臭いがプンプンする地下だ。
階段を下りると目の前に立ちふさがったドア。
ミユはそのドアを開けた!
すると!
なんとトイレだった。
「は?」
思わずミユの口から漏れた。
しかも、運が悪いことにトイレで女装オヤジがう○こ中だった。
股を開いて便座に座っているオヤジと目が合ってしまった。股間にモザイクを入れないと放送禁止になってしまう。
眼を剥いて固まっていたオヤジが急に叫ぶ。
「キャー痴漢よ!」
「はっ?」
痴漢=自分という公式が理解できなかった。
むしろ女装したオッサンのほうが痴漢でしょ? みたいな。
どうして、どうして、と思いながらミユは逃げた。
騒ぎはどうやら大きくなってしまったらしく、痴漢騒ぎでそこら中に女装したオッサーンが溢れ出した。
ミユは必死で逃げた。
そして、ミユは再び地下への階段を見つけた。明らかにこの店の構造は可笑しい。
今度はバスルームかと思いながらもミユは階段を下りた。
地下室に下りると、すぐに鉄格子の牢屋が目に入った。中にはたくさんの男が捕らえられている。そんな中で浮いている二人の存在。
「バイト君、早く助けてくれないかな?」
アインだった。
そして、もう1人はメグ。
「センパイ、どうしてこんなところに!?」
その質問をミユは軽くスルー。
すぐにミユはみんなを牢屋から助けようとするが、鍵がないのでどーにもならない。
ミユが困っていると後ろから気配がした。
すぐにメグが叫んだ。
「センパイ危ない!」
「はい?」
と、ミユが後ろを振り向くと、そこにはなんと……スク水姿のオヤジが立っていた!
股間からはみ出してる未処理のお毛毛が(ry
その姿を見たミユは精神的痛恨の一撃を受けて気を失ってしまった。
と、いうわけで――。
「バイト君まで捕まったら意味ないじゃないか」
明らかなアインのグチ。
さらにこっちからも攻撃される。
「どうしてセンパイがいるんですか?」
しつこいメグからの質問。
もちろん質問の答えを正直に言うわけにはいかない。メグにプリティミューだってバレたら大変だ。かと言ってウソで誤魔化してもメンドクサイことになりそうだ。
なので完全シカト。
「センパイ、わたしの話聞いてるんですか?」
「そんなことよりここを脱出する方法を考えなきゃね!」
ミユはメグと目を合わせない。絶対に合わせない。合わせないっていうか、見えていないつもり。
アインはため息を漏らした。
「脱出できるならボクがとっくにやっているよ」
他の男たちもあきらめモードだった。
かなり巨大な牢屋だ。中にいるのはざっと4、50人。それでもまだまだ余裕のある牢屋だ。
これだけの人数が集まっても脱出不可能なのだ。
ミユは牢屋の外を見渡した。牢屋の見張りにはスク水のオッサン1人だ。さっきはワキ毛ボンバーとモッコリ股間と以下略で気絶してしまったが、もう気絶するほどのインパクトは感じない。だって後姿しか見えないもん。ただ、ケツに食い込む水着が目の毒だ。
スク水オヤジは何も持っていない。牢屋の鍵はどこにあるのだろうか?
「この牢屋の鍵ってどこにあるの?」
ミユが牢屋の住人たちに尋ねると、コソコソ話で伝わってきた。牢屋の鍵はあのスク水オヤジが持っているらしい――股間に入れて。
最悪だ。
股間に入ってる鍵なんて触りたくもない。
作品名:科学少女プリティミュー 作家名:秋月あきら(秋月瑛)