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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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科学少女プリティミュー

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第4話_サラセニアぁンだよプリティミュー!


 ホウジュ区は巨大な都市なので、いろんなサービス業なんかが充実している。
 ミユはサービス業のお店が立ち並ぶ路を走っていた。
 そのサービス業とは風俗店、アダルトショップ!
 アインの自宅が近くにあるので、どーしてもこの路を通らなきゃいけないのだ。
 なのでミユはいつも駆け抜けることにしている。
 だが、しかし!!
 今日に限って走ってる途中で頭痛と吐き気が!
「な、なに……この臭い?」
 ミユは口と鼻を押さえながら辺りを見回した。
 バーコードハゲ!
 青ヒゲじょりじょり!
 スネ毛ボンバー!
 ミユは異様な光景を見てしまった。
 バニーちゃんの姿をした中年男たちの集団。
 股間のモッコリが放送コードギリギリですね!
 謎の変態女装オヤジたちが客引きをしていた。しかも、この腐った果実のような臭い。どうやらオヤジたちの香水らしい。
 ミユは看板を棒読みする。
「新装開店、オカマクラブ熟れた果実」
 熟れすぎて腐っている。店の名前を考えた奴の脳ミソも腐ってるハズだ。
 こんな店に誰が来るもんかっ!
 なんてミユは思ったが、ところがドッコイ!
 魔法に掛かったように男たちが店に吸い寄せられている。
 マニアだ、全国にマニアが店に集まってるに違いない。
 と、いうわけでミユは見なかったことにした。
「さーってと、早くアインのとこ行かなくちゃ!」
 逃げるように、というか、あからさまにミユはこの場から逃げた。

 唐突なセリフからはじまった。
「そういうわけだからバイト君、消えたオッサンたちの救出をするんだ」
 説明ゼロだった。
 アインはミユと顔を合わせた瞬間、いきなりそんなことを言った。
 あまりの意味不明さにミユは数秒間フリーズ。
 そこへワトソン君が補足説明をしてくれた。
「ここ数日、ホウジュ区獅子舞町で行方不明者が多発してるにゃ。その人たちを探して欲しいにゃー」
「あたしが何で?」
 今までも『何で?』と思えることをしてきたけど、今回はさらに摩訶不思議だ。
 だって今まではアインの私利私欲(趣味)のために働かせれてきた。なのに今回は人命救出?
 まるでこれじゃ正義の味方みたいじゃないかっ!
 ミユは慌ててアインのおでこに手を当てた。
「大丈夫、熱あるんじゃないの!?」
「熱なんかないよ」
「ま、まさか……偽者!」
 アインが偽者説浮上。
 さっとミユはアインから離れた。
「ワトソン君、このアインは絶対偽者よ!」
「偽者じゃないにゃー」
「はっ!? まさかワトソン君まで偽者!?」
 ミユピンチ!
 だが、ここでアインの思わぬ発言。
「バイト君こそ熱があるんじゃないのかい?」
 さらにワトソン君の発言。
「今日のミユは可笑しいにゃー。まさか偽者にゃ!?」
 しまった、そっちかっ!
 ミユのほうが偽者だったのかぁぁぁぁっ!!
 突然、ミユが低く笑いはじめた。
「ふふふふ、バレてしまっては正体を明かさないわけには……ぶっ!?」
 ミユ(偽)が何者かに後頭部を殴られた。
 殴ったのは――もう1人のミユ(新)だ!
 そして、アインが叫ぶ。
「ボクのフィギュアがーっ!!」
 ミユ(新)がミユ(偽)を殴るときに使用した鈍器が、アインのコレクションの1つだったのだ。
 アインショック!!
 ワトソン君はミユ(新)とミユ(偽)を見比べて傾げている。
「どっちが本物にゃ?」
 ミユ(新)は気絶しているミユ(偽)の胸倉を掴んだ。
「これのどこがあたしなのよ! こんなアゴ青くないし、スネ毛ボーボーじゃないし、そもそもどう見たってこれ男でしょ!」
 思わぬ指摘でアインとワトソン君ショック!!
 ……まったく気づかなかった。
「ボ、ボクの目を欺くなんて……」
「本物のミユと変わらないにゃー」
 まだ信じられないアイン&ワトソン君。
 そして、ミユ(本物)がボソッと。
「二人ともシネ」
 アインの手にはミユの自爆スイッチが握られていた。
「あはは、どーやら本物のバイト君のようだね。でも、確実な証拠を得るためにボタンを押してみようかな」
「やめてくださいお願いします」
 ちょー真面目な顔でミユは棒読みした。
 アインだったらマジで押しかねないような気がする。
 なんとか阻止するためにワトソン君が冷静に言う。
「ここで爆発したらアインの大事なフィギュアも吹っ飛ぶにゃー」
「それもそうだね」
 アイン納得。
 てか、フィギュアがぶっ飛ぶ前に、アインの体がぶっ飛ぶ。
 さてと、ひと段落したところで、問題はこの気絶しているミユ(偽)のことだ。
 アインはマジックハンドを使ってミユ(偽)の体を調べはじめた。
「ふむ、どうやら胸は詰め物らしいね。股間にも蛇口型の排泄器官があることから、これは……男だ!」
 ミユは呆れていた。
「だから言ってるじゃん」
 問題はそんなことじゃなくて、この女装男が何者で、いったい何の目的だったのか、そこが重要ではないのか?
 しかし、そんな答えなどすでにアインの頭脳は解決していた。
「こいつはボクの大事なコレクションを狙っていたんだ。そうに違いない!」
 いつもミユは思う。
 本当にこのクソガキは天才科学者なのだろうか?
 とりあえずこの女装男は縛り上げ、あとで警察に届けることで一件落着……したのか?
 アインの切り替えは早かった。
「さて、そういうわけだからバイト君。さっきも説明したけれど、いざ出動だよ!」
「はっ?」
 ミユには理解不能だった。なぜって、その説明とはミユ(偽)にしたものだったからだ。てゆか、ミユ(偽)にした話も説明になってなかった。
 ワトソン君がミユの苦悩をキャッチして説明してくれた。
「獅子舞町で失踪者が多発してるにゃ。それを救出するのが今回の任務だにゃー」
「あたしが何で?」
 デジャブー!
 だが、先ほどと同じ展開にはならなかった。
 アインがめんどくさそうに捕捉をする。
「失踪者の中に原画家が混ざっていてね、彼がいないと『ときめけ』の発売日が延期になるんだ……最悪、発売すらできなくなるかもしれない」
「ときめけってなに?」
「ときめけを知らないなんて、キミは人生を5パーセント損失しているよ。ときめけと言えば、『闘神菊地さんのメリケンサック拳勇伝(けんゆうでん)』の略じゃないか、超人気格闘恋愛シミュレーションだよ」
 ちなみにこの部屋の棚にもそのフィギュアが飾られていた。
 七三分けの眼鏡サラリーマンのムキムキ筋肉フィギュア。と、その傍らに並ぶ総勢8人の女性キャラ――全員攻略可能だ!
 とにかく今回もアインの私利私欲(ワガママ)のためにミユは働くらしい。
 ホウジュ区獅子舞町といえば、アインの研究所のすぐ近くで、そういえばミユはここに来る前通った道だ。
 そして、ミユはある重大なことを思い出してしまった。
「あ、そういえば……ここに来る途中、オカマのお店が新しくできてたような……」
 散らばっていたパズルのピースが合体する。
 そう、まさに床に散らばっているグルグル巻きの女装オヤジ。このオッサンと失踪事件が結びついてしまった。
 アインはパソコン画面を眺めていた。いつの間にか作った線グラフだ。