科学少女プリティミュー
刃物を先端につけたような鋭い尻尾がミューに襲い掛かる。
「きゃーっ!」
ミューの悲鳴と共に切り裂かれる甘ロリ衣装。
男たちから歓声あがった。
再び切り刻まれるミューの衣装。そして、湧き上がる歓声。砂浜はムンムンした暑い熱気に包まれた。
衣装をボロボロに切り裂かれ、ミューは剥がれ落ちそうな胸元の布を押さえて後退った。
「このドSの痴女!」
「おほほほ、もっと辱めに合わせてから止めを刺してやる。シャーッ!」
奇声をあげて襲い掛かってくるレイディスコーピオン。
ミューは切り札を出した。
「マジカルハンマー・フィギュアチェンジ!」
振り下ろされたハンマーはレイディスコーピオンのおでこにペチン!
が、なにも起こらなかった。
鋭いハサミはミューの胸を切り裂く!
湧き上がる歓声!
「きゃーっ!」
叫ぶミュー。
外れたブラジャー!!
ミューは両手で胸を隠してしゃがみ込んでしまった。
これって絶体絶命のピンチか!
ミューを見下して立つレイディスコーピン。
「お遊びはここまでだ。止めを刺してくれるわ!」
振り上げられる鋭いハサミ。
このままミューはやられてしまうのか!
「ちょっと待つにゃー!」
その声はまさか……!?
海をクロールで泳いで来る人影……人影?
褐色の肌をした若い男が世界新記録に迫る勢いで、いやそれ以上のスピードで海を泳いでくるではないか!
「何者だ!」
叫んだレイディスコーピオンは見てしまった。
海から上がってきた美少年の姿を……しかもフル○ンだ!
「おいらが相手だにゃ!」
顔に似合わない口調。しかもフル○ン!
「な、なんだ貴様は……ち○こ丸出しでアタクシに敵うと思っているのか!」
威勢は言葉だけで、レイディスコーピオンは焦っていた。その視線が向けられているのは、美少年の股間!!
――巨根だった。
「クソッ、ち○こごときに……ち○こなどにアタクシが負けてなるものかっ!」
取り乱しながらレイディスコーピオンは謎の美少年に襲い掛かった。
まるで猫のようなしなやかさで攻撃をかわす美少年。そのたびに、ち○こが右左に踊る。
レイディスコーピオンはち○こから目が離せなくなってしまった。
海だからってち○こ丸出しで戦うなんて弾けすぎだ。てゆーか、卑怯だ卑劣だ、放送事故だ!
ただいまお茶の間では急遽差し替えの映像が流れている。ち○こが踊ってる映像なんて真昼間からテレビで放送できるかボケッ!
踊っているのはち○こだけではない。それに踊らされるレイディスコーピオン。
「早くち○こを隠せバカがっ!」
「おいらはいつも裸だにゃー!」
「巨根を自慢したいなら他のところでやれ!」
もうレイディスコーピオンの頭の中はち○こでいっぱいだった。
その隙に謎の美少年が攻撃を繰り出す。
「ねこパーンチ!」
鋭いツメがレイディスコーピオンの腕を掻っ切った。
切られたのは腕なのに、血を豪快に噴いたのは鼻の穴だった。
真っ赤に燃える太陽のような鼻血をレイディスコーピオンは噴出した。
レイディスコーピオンが怯む……攻撃にではなくち○こに怯んだ隙に、謎の美少年はミューを抱きかかえた。
抱きかかえられたミューは顔を真っ赤にする。その視線はもちろんち○こ!
今日はもうち○こフィーバーだ!
そして、謎の美少年はミューを抱きかかえたまま走り出した。
「ひとまず逃げるにゃ!」
独り残されたレイディスコーピオンは砂浜に膝を付き、何かをブツブツ呟いていた。
「ち○こ……ち○こ……ち○こ……ち○こ……」
かなり重症のようだ。
閉店ガラガラ〜。
海の家に逃げ込んだ謎の美少年とミユ。ミユの変身は解けてしまっている。
2人が店に飛び込んだのと同時に閉店ガラガラして、外からの出入りを一切封じた。
フランクフルトを食べていたアインはその手を止めた。
「ちんちんを隠したまえワトソン君、看板娘の前だよ」
顔を真っ赤にして『いやん』と声をあげたババア。
というか、やっぱり美少年の正体はワトソン君だったのだ。しゃべり方からしてバレバレだった。
ワトソン君は脱ぎ捨ててあった白衣を腰に巻いた。
「なにも着ないほうが涼しくていいにゃ」
軽く愚痴を溢すワトソン君を、ずっと驚きの眼差しで見たままのミユ。
「巨根の正体……じゃなくて美少年がまさかワトソン君だったなんて……しかも巨根」
巨根にこだわりすぎ。
そして、ミユはもうひとつショックなことがあった。
「てゆーか、ワトソン君ってショタキャラじゃなかったの!!」
ミユの勝手な妄想では、ワトソン君はアインよりも幼くて、擬人化したらショタそのものだと思っていたのだ。見事に期待を裏切られた!
しかも巨根だなんて反則だ!
なんかもうミユはいろいろショックだった。
世の中なにを信じていいのかわからない。疑心暗鬼になりそうな勢いだ。
でも、どうしてネコのワトソン君が人間の姿に?
まさか悪い魔女に呪いをかけられた?
でも、やっぱり有力な説はどっかのマッドサインエンティストの被害者?
疑うミユの視線がアインに向けられた。
「アインがやったの?」
「ん? なんのことだい?」
「ワトソン君がなんで人間の姿になってるわけ?」
「あぁ、彼は水をかぶると人間の姿になっちゃうんだ」
なんかそんな設定聞いたことがあるような。
しかも――。
「お湯をかぶると元の姿に戻るよ」
と、アインは追加した。
やっぱりそんな設定聞いたことがあるような。
ミユはどっからか真っ赤なヤカンを持ってきて、ワトソン君の頭からお湯をぶっかけた。
「熱いにゃー!」
叫び声をあげたワトソン君の身体が縮んでいく。アソコのサイズもミニサイズ。
そして、全身に毛の生えた三毛猫になってしまった。
「マジだ……」
ミユは信じられないと言った感じで呟いた。
やっぱり世の中信じられないことばっかりだ。
ミユはなんだか頭がガンガン響いてくるようだった。頭痛かなっと思ったら、閉店したシャッターを叩く音、そして声。
「逃げるなんて卑怯だぞ!」
レイディスコーピオンの声だった。どうやら重症から立ち直ったらしい。
すぐそこまで敵が迫っている。だが、アインは余裕をぶっこいている。
「このヤキソバも美味しいよ」
フランクフルトの次はヤキソバまで食っていた。
ミユはアインに噛み付いた。
「ちょっと、ごはんなんて食べてないで外の怪人をどうにかしてよ!」
「どうにかするのはキミの仕事だよ」
「でも……今のあたしじゃ……」
――敗北。
3匹目の怪人にして早くも挫折。
だが、まだ本当に負けと決まったわけじゃなかった。
ヤキソバを食べながらアインは言う。
「キミが負けたのは当然だよ。アクアモードじゃないからさ」
そうだ、アクアモードがあった。
海や水辺に適しているという変身モード。
ここでワトソン君が説明すると見せかけて、先にアインが口を開いた。
「だから、変身のときにサイエンス・アクア・メイクアップって叫ぶだけだよ。1回の説明で覚えようよバカだなぁ」
「バカじゃないから。でも本当にそれであの怪人に……だって、マジカルハンマーだって効かなかったのに」
作品名:科学少女プリティミュー 作家名:秋月あきら(秋月瑛)