科学少女プリティミュー
冒頭のシーンが見事オール蛇足に終わってしまった。
しかし、アインはあることに気付いた!
「そうだよ、イカは? 大魔王イカはどうなったの?」
ちなみに命名はアイン。
「あれはこの海の守護神様じゃ!」
突然、看板娘が会話に乱入してきた。
「守護神様を怒らせると祟りが起きるぞ、恐ろしや恐ろしや」
両手のシワとシワを合わせて看板娘は念仏を唱え出してしまった。こんなババアは放置して、アインは海の家を飛び出した。
海岸は静かなものだった。怪獣騒ぎで行楽客はいなくなり、真っ赤な日差しが照りつける砂浜。
「大魔王イカまでいなくなるなんて……ボクのフィギュア帰って来〜い!」
海に青春を叫ぶみたいな状態。怪獣を取り逃がしたのがそーとーショックだったらしい。
ワトソン君がアインの脚に寄りかかるように手を乗せた。
「まっ、こういう日もあるにゃ。」
イチゴのカキ氷を食べながらミユも海の家を出てきた。顔色は青と赤が混ざって悲惨な色になっている。
「あたしは怪獣と戦わないで済んでよかったけど」
「よくないよ、ボクのフィギュアはどうなるんだ!」
「男の子なんだからグズグツ言わないの」
「ボクは男じゃないよ女だよ!」
「はっ?」
常夏のビーチでミユは一気に凍りついた。
そんな衝撃的な展開が繰り広げられようとした瞬間、なんか新展開が乱入してきた。
「おーほほほほっ、貴様がプリティミューとかいう小娘だな!」
赤いハイレグ水着を着た美女。手はハサミになっている。出たっ、今回のジョーカー怪人レイディスコーピオンだ!
突然の怪人出現にアインたちは驚くこともなく、ミユにいたってはそんなことより大事なことがあった。
「ちょっとアンタ黙ってて!」
レイディスコーピオンに言ってミユはアインの襟首に掴みかかった。
「今女の子って言った?」
これは目の前の怪人より重要な問題だ。
しかしレイディスコーピンにしてみれば、とんだ侮辱だ。
「オイッ、貴様! アタクシを放置する気か!!」
「だからアンタちょっと黙ってて、あたしはアインと大事な話があるの!」
「黙っててとは無礼千万な小娘だ。おい、お前たち構わないからやっちまいな!」
レイディスコーピオンの命令で、脇に従えていた全身黒タイツの戦闘員がミユたちに襲い掛かって来た。
そんな状況に陥ってもミユの眼中はアインだけ。
「女って言ったでしょ、女なの? 少年じゃなくて本当に女の子なの!?」
「バイト君、危ないよ」
「えっ?」
ガツン! っとミユは後頭部を殴られた。しかも鉄バット。
熱い砂に顔を埋めて倒れたミユ。
だが、こんなことじゃミユの頭はスイカ割りのようには割れない。だって改造人間だもん。
「いった〜い!」
後頭部を押さえながらミユは飛び上がった。痛みがあるのは仕様だ。
すでに海の家の中で日差しを避けて、ヤキソバを喰ってるアインからアドバイス。
「バイト君、アクアモードに変身だ!」
ぶっちゃけそんな機能のことミユはすっかり忘れていた。というか、あのときはそんな説明を聞いてる場合じゃなかった。
「アクアモードってなに!!」
ミユが叫ぶとワトソン君がさっと現れた。
「説明するにゃ。アクアモードとはプリティミューの変身形態のひとつで、海や水辺での戦いに優れた効果を発揮するにゃ」
そんな説明を受けている最中もミユは戦闘員たちに追い掛け回せれていた。
「えー? なに? 聴こえなかったもう一度お願い!」
だが、ワトソン君がもう一度説明することは二度となかった。
戦闘員に首根っこを掴まれたワトソン君が投げられた!
しかもそっち海!
海の中に投げられたワトソン君をさらなる恐怖が襲う。高波だ!
高波がバッシャ〜ン!
ワトソン君は高波に攫われて海の藻屑に……。さよなら、キミのことは一生忘れないからっ!
はい、みんなで一分間、黙祷!
ち〜ん。
ミユは故人のことをすでに忘れることにして、助けの眼差しをアインに向けた。
「助けてアイン!」
「ボクが助けたら、キミを雇ってる意味がないじゃないか」
あっさりと見捨てられた。
こうなったらミユは自力でなんとかするしかない!
ミユはケータイを取り出して叫ぶ。
「サイエンス・パワー・メイクアップ!」
光に包まれたミユが一瞬にしてプリティミューに変身した。通常変身なので色はそうでもないけど、着てみると暑苦しい白ロリだ。白だけどぜんぜん爽快じゃない!
しかも砂浜には適さない厚底ブーツ。
それでもミユは奮闘した。
マジカルハンマーを構えるミユ。
えい、やーっ、とぉー!
てな感じでザコ戦闘員を倒していく。戦闘員は倒されるために出てくる存在なのだ。
しかし、戦闘員はゴキブリのように湧いてくる。
しかも!!
ここで突然、邪魔が入った!
「プリティミューさんこっち向いてください!」
テレビカメラの中継だった。それも1台2台じゃない、怪獣騒ぎで駆けつけた民間及び国営がわんさかわんさか。こうやって今日もミユは白日の下にさらされるのだ。
しかも!!
報道陣に混ざって一般カメラマンまで。
しかも!!
カメラマンの中には――。
「センパイ!」
追っかけメガネッ娘、ミユの後輩のメグだった。
その姿を発見してしまったミューはそっちに目を取られて、後ろから飛び掛る戦闘員を避け切れなかった。
「キー!」
飛びついてきた戦闘員の手が……ミユの乳を鷲掴みにした!
「えっち!」
ミユの背負い投げが炸裂!
「キーッ!」
戦闘員の言葉を訳すなら『不可抗力だ!』に違いない。
このおっぱいミュぅっと揉まれちゃった事件が今日のベストショットだろう。
暑さと恥ずかしさで顔を真っ赤にしてゼーハーゼーハー。ミューは額の汗を拭った。
目に入る敵はもう1人しかいない。戦闘員はみんな砂浜で気持ち良さそうにお休みだ。
レイディスコーピオンが鞭を振るった。
予定としては『バシン!』と良い音を鳴らす予定が、砂に音を吸収されて『プシッ』みたいな腑抜けな音が鳴ってしまった。
「鞭のクセして弛んでるとはけしからん、お前はふにゃ○ンかっ!」
なんか勝手に怒り出してレイディスコーピオンは鞭を捨ててしまった。
そんな光景を見ていたミューは意味不明な心境だった。
「いきなり鞭をふにゃチ○呼ばわりして怒り出すなんて……欲求不満!?」
そう言われてみれば、レイディスコーピンは欲求不満そうな顔をしている。怒り易いのもそのせいかカルシウム不足のせいだ。
「アタクシが欲求不満だと!? ち○こなんて付いてる下等生物にアタクシが媚びるとでも思っているのかッ!」
生放送の電波に乗る『ち○こ』発言。しかも言っているのは怪人と言えど、見方を変えればコスプレ美女。きっと高視聴率だ。
常夏のビーチでプリティミューVSレイディスコーピオンのち○こナシ対決がはじまろうとしていた。
これまでミューに挑んだち○こアリ怪人たちは、ことごとく破れていった。
しかし、この戦いの行方は?
自慢のハサミでレイディスコーピオンが攻撃を仕掛ける。
ミューのマジカルハンマーはその攻撃を防ぐ。だがハサミは片方の手だけだったが、お尻にもうひとつ武器があった。
作品名:科学少女プリティミュー 作家名:秋月あきら(秋月瑛)