詩群。
■眠りにつく頃
うつくしい光景を見た
低く降りてゆく意識の中で 確かに感じる
慈悲にも似た 断絶を 誰が裁けるのだろう
魂はゆるやかに下降する
新しい僕は 此の世で最も虚無に近い個体として生まれる
笑顔を思い出すんだよ こんなところで
人はどんな場所でも生きていけるんだ どんな場所でも
哀しいことだけれど それでも 僕はそれを喜びたい
そして僕は はじめて生命を知る 深い夜の中の 魂の呼び声を
いつか終わりが訪れたなら 此の愚かで哀しい行為も終わるのだろうか
無駄と解りつつも僕は問いかけ続ける 孤独の直中で
聞こえているなら 僕の心に触れてほしい
此処にある生命を伝えてほしい
まるで腕の中でずっと守ってきた大切な夢に そっとくちづけるように
眠りにつこうとしている僕のかわりに どうか
誰もが ただひとりで それはとても孤独なのだけれど
此処には多くの生命が充ちている 哀しくても 愚かしくても
僕は其処にただ 光を見いだすんだ
だから寂しくないよ ありがとう そしておやすみ
生命の音がきこえる
深い夜 此処は森の中で 僕は 眠りにつこうとしている
今ようやく解った
確かに此の世に僕はひとりなのだけれど また 僕は世界でもあるって
いつか還ってゆく日には きっと あたたかな心を抱いてゆけるから
寂しくないよ さようなら そしておやすみ
深い夜の向こうに 光が見えるころ 此の森のどこかで新しい生命が目醒めるんだ