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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第二回】届け恋の光合成

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自宅玄関の引き戸を開けた京助は再び玄関の引き戸をゆっくりと閉めた
そして表札を見、ここが自分の生まれ育っている【栄野】という家であることを確認した
「おかえり~京助~」
悠助が閉めた戸をカラカラと開けて抱きついてくる
「なぁ…悠…お兄ちゃん今な~んか変なもの見えたんだけどアレ、何かなぁ~?」
悠助を見るわけでもなくどこか遠くのメルヘンな世界を見ているような遠い目で京助は訊ねた
「ヒマ子さんだよ」
玄関の中を振り返るとそこには
「お帰りなさいませ京様」
そういって両手(?)をつき頭(?)を下げている物体がいた
「ヒマ子さんって…あのヒマ子さんか?」
京助は庭で悠助が育てている鉢植えの向日葵を思い出した
そしてその物体を改めてみると確かに【ヒマ子さん】と書かれた鉢がついている
「そうでございます…私悠様に植えていただいた向日葵、ヒマ子でございます」
ヒマ子は両手…いや両葉をついたまま頭…(?)をあげ京助を見ると顔を赤らめた
「…ナンダヨその行動は;」
まるで恋する乙女のようなヒマ子のしぐさに京助が突っ込む
「ヒマ子さん、京助が好きなんだって」

「は?」

悠助の耳を疑いたくなる問題発言に京助が固まる
「いやですわ悠様!! そんなはっきり…私困ってしまいますわ…」
ヒマ子が両葉で顔を支えイヤイヤと横に振る
「…困ってしまうのは俺の方だ…」
玄関の柱に頭をつけて溜息をつく
チラリとヒマ子の方を見ると片葉で床に【の】の字を書きながらモジモジしている
京助はガックリとその場にへたり込んだ
「あ!! そうだ京助! 緊ちゃんが大変なのー!!」
悠助がへたり込んだ京助の制服を引っ張って騒ぐ
「大変~? 何が…;」
のろのろと立ち上がると手を引っ張って庭につれて行こうとする悠助に身を任せよろよろとついていった
「…何してんだ緊那羅…」
庭に出ると緊那羅が洗濯物干し竿の下に座り込んでいた
「…緊那羅って」
「ギャ------------------------ッ!!!!!;」
「だ--------------------------ッ!!!!!?;」
呼んでも返事をしない緊那羅の肩を京助が叩くと途端に上がった緊那羅の悲鳴

ゴン

「落ち着け;」
それに対して京助が緊那羅の頭を殴った
「きょ…うすけ…」
ハッとして顔を上げた緊那羅が京助と悠助を見、安心したように溜息をついた
「緊ちゃん、もう大丈夫だからね? 京助帰ってきたから」
悠助が『ねー』っと京助を見上げて笑う
「…で? 何が大変なんだ?」
確か悠助は緊那羅が大変ということで京助を庭に連れてきた
見たところ別に何も【大変】そうには見えない緊那羅とその周辺に何が大変なのか悠助に尋ねた
「緊ちゃんね~立てないの」
「…は?」
緊那羅を見ると真っ赤になって俯いた
「…腰…抜けたのか?」
「あんなもんみりゃ誰だって腰抜かすっちゃッ!!;」
ぼそっといった一言に真っ赤になりながら緊那羅が声を張り上げて言い返す
【あんなもん】とはヒマ子さんのことらしい
迦楼羅か乾闥婆がやってきたのかと思い覚悟を決めて庭に入ったのはいいがいたのは迦楼羅でも乾闥婆でもなく動いて話す向日葵のヒマ子さん
極度の緊張と決死の覚悟で精神がいっぱいいっぱいの状態で【あんなもん】のヒマ子さんを見た緊那羅は腰が抜けてしまったのだ
「俺は抜かさなかったぞ」
ざまぁみろ的笑みを浮かべ胸を張る京助を緊那羅は赤い顔でにらんだ
「僕も抜かさなかったー!!」
悠助がピョンピョン飛び跳ねながらはしゃぐ
「わかったっちゃから…起こして…;」
はぁ~っと深い溜息をつき緊那羅が手を差し出すと京助がその手を掴んで立たせる
結構長い時間その場に座り込んでいたらしく立てた後も足が笑っている緊那羅を京助と悠助が支えながら家に入る様子をみていた【あんなもん】のヒマ子は密かに緊那羅に対し女のジェラスィーというものを燃やしていた
「このままではいけませんわ…私女として男の緊那羅様に負けては一生の恥…京様は私のものでしてよ…」
緊那羅はただならぬ殺気を感じぶるっと震えた
それはこれから始まるヒマ子の勘違いな敵対心の幕開けの合図だったのかもしれない