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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第二回】届け恋の光合成

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「っでえええええぃ!!!!!!!!!!;」
月曜日、栄野家はいつも通り(強調)の朝を迎えた
寝坊した京助が家の廊下を走り回るバタバタという足音と朝食(と弁当)を作っている良い香りに混ざり洗濯機のまわる音と洗剤の香りもする
「京助! 弁当忘れてるっちゃッ!!」
自分の部屋の戸を勢いよく開けて鞄を持ち玄関で靴の踵を踏んだまま走り出そうとしている京助に緊那羅が慌てて弁当を手渡すと『サンキュ』というように片手を挙げて走り出す
これも【いつも通り】の一つになっていた
小学生の悠助は近所の子供会で集団登校をしているということでもう家をとっくに出ていた
「…さてと…」
京助を慌しく見送ると緊那羅は立てかけてあった箒を持ち境内に向かう
もうすっかり習慣になってしまっているらしい
母ハルミは庭で洗濯物を干していた
皺を伸ばす音が気持ちよく響き干された洗濯物が風になびく
昨日ファンタ(グレープ)まみれになった服も綺麗に洗濯され干されていく
母ハルミが京助の履いていたハーフパンツも他の洗濯物と同様に皺を伸ばすため宙に打ち付けるとそのポケットから何かが飛び出した
「あら…今何か出たかしら? …気のせいかしらねぇ?」
キョロキョロと自分の周りを見てからハンガーにハーフパンツを干した
赤い玉が鉢の中でキラリ、と光った

「どうよキンナラムちゃんは」
昼休み、南がペットボトル片手に聞いてきた
「どうよって何がどうよ?」
玉子焼きを箸で挟んだまま京助が聞き返す
「天だかから何か来たか?しばらくしたら誰か来るとかゆーてたじゃん?もう結構【しばらく】してると思うんだけどさ」
机に腰掛けて坂田の弁当からおしんこを失敬しパリパリ噛みながら中島が言った
「別に…なーんの音沙汰もねぇぞ?…緊那羅は毎日母さんの手伝いしてるし…」
玉子焼きを口に含みここ数日のことを頭の中で振り返る
「今日辺り来そうな気しなくもないんだけどさぁ…来たら来たらでアレだろ?」
「どれだよ」
箸を上下に動かして溜息をつく京助に再び弁当を狙ってきた中島の手を箸で刺しながら坂田が突っ込む
「面倒っていうか…その誰か来たらまたこの間みたいな感じになるんだろ? 緊那羅が来たときみたいにさ~…守るだの殺すだのダーリンだの…」
「アレはもう御免だねぇ…」
南が遠い目をしながら呟く
緊那羅との初対面(及びその他)を思い返し4人はそろって溜息をつく
「俺今度あんなんなったら京助と友達やめるわ」
キラキラと爽やかな(エセっぽい)笑顔を浮かべて坂田が申し訳なさそうに手を振った
南、中島も同じく爽やかな(エセっぽい)笑顔でコクコク頷いている
「…俺も自分と友達やめてぇよ…」
京助はガックリと肩を落とした
「いや、無理だから」
追い討ちをかけるように更に爽やかな笑顔で南が京助の落ちまくった肩に手を乗せた

「じゃあまた明日ね~」
一学期中はほぼ午前授業の小学一年生悠助が友達と別れ、石段を駆け上って元気よく玄関の戸を開けて
「ただいまー!!」
と家の奥に向かって叫ぶと
「おかえりだっちゃ」
後から緊那羅が声をかけてきた
「ただいま緊ちゃんー」
腰に抱きつき満面の笑みで緊那羅を見上げると緊那羅も笑顔で少し汗ばんだ悠助の前髪を撫で上げる
ゴト…
ふと庭で何か重たいものが動く音がした気がする
「…今何か気こえたよ…ね?」
悠助が庭の方を見ながら緊那羅に聞いた
「…悠助も聞こえたなら気のせいじゃないっちゃね…」
昨日の迦楼羅と乾闥婆を思い出し緊那羅の顔つきが険しくなる
腰から悠助を引き離し庭へと向かう
その手にはいつの間にかあの棒のようなものが二本握られている
「緊ちゃん…」
「悠助はそこにいるっちゃ」
声をかけてきた悠助に振り向かないで言った

ゴト…ゴト…

音がだんだん近づいてくる
緊那羅が庭に近づいているせいもあるが向こうの音も緊那羅に近づいている様な気がする
「…私の…役目…京助、悠助…」
グッと手に力を入れて棒のようなものを構えた緊那羅が庭に足を踏み入れた
「!!?; ッ---うわぁぁっ!!!!」
「緊ちゃん!!?」
玄関先で緊那羅に言われたとおり待っていた悠助は緊那羅の叫び声を聞いて一瞬迷った後庭へと駆けていった