狼の騎士
まさか道中で目的を同じとする人に会うとは思わなかった。向こうも同じように思ったらしく、ゼルの弾けるような笑顔を見て、意外そうに驚いていた旅人もそれにならった。
「これは嬉しいな、恩人と一緒に旅ができて、その上少なくとも二年は顔を合わせられるなんて!」
「そう何度も恩人なんて呼ばないでくれよ。ぼくはジュオール・ゼレセアンっていうんだ。でもみんな下の名前を縮めてゼルって呼んでくれる」
「こっちこそ、助けてもらった身なのに名も名乗らず申し訳ない。ぼくはデュレイ。デュレイク・フロヴァンスだ。改めて礼を言うよ。ありがとう、ゼル」
「こちらこそ。よろしくな、デュレイ」
立ち上がりながら名乗った二人は、しっかりとお互いの手を握りしめた。