恋音
「す…鈴暮君っ!」
まったく知らんハズの女子に声をかけられた。
いあ、コイツ…どっかで……?。
一人云々と首を傾げていたら、女子がめっちゃ震えながら。
「こ、校内では、動物禁止ですっ!」
「あー……」
バレタか。
「分かった、自販機で牛乳買ったら消える。」
「あ、あと!」
「あぁ?」
うぜぇな。
「その、金髪は…校則違反……です。」
「あー……じゃあガッコやめるわ。」
「それはダメです!」
「はいはい、分かったって、てかアンタ何?」
「え、あ、私、副会長ですから…」
「あーー……」
思い出した。
コイツ夏越と仲良く話してた奴だ。
生徒会仲間だったのか。
「あと、午後の授業にはちゃんと出てください!」
「あー……」
ほんっとうぜぇ。
まじイライラする。
「鈴暮君…?」
「………」
「聞いてますか?」
「………」
「あのっ!」
「あきら!」
下の名前で呼ばれて思わず目を見開く。
コイツが言った……わけじゃなさそうだ。
じゃあ誰が?
声がした方を振り向く。
「ぇ……夏越…?」
「鈴暮…と柊?」
「あ、はい…。」
夏越を見た瞬間、女子の顔は真っ赤になり嬉しそうに返事する。
嗚呼、なんだやっぱり彼女か…。
「鈴暮、子猫どうした?」
「……ココにいる。」
シャツの中を上から覗かせる。
そうすると子猫が夏越に気づいて顔を出す。
「みゃあ。」
「よしよし、可愛いな。」
「……お前、さっきびびってなかった…?」
「うん、けど慣れた。」
「…あっそ。」
夏越がヘラヘラ笑いながら子猫を撫でる。
そのたびに俺の首に手があたって何か痛いけど。
夏越が嬉しそうだから、まぁいいか。
なんて若干ほのぼのしていたら、隣で黙っていた女子が口を挟む。
「会長、校内では動物禁止です…」
「ん?あぁ、そうだったな。」
「あと、金髪も…」
女子がチラッと俺を見る。
なんだコイツ、何か俺に恨みでもあんのかよ。
「ハハ、今更鈴暮に言ってもしょうがないだろ?」
「か、会長!」
「…喧嘩売ってんのか、お前。」
「ごめんごめん、なぁ鈴暮、一緒に昼食べないか?」
「…は?俺?」
いきなりの事に戸惑う、
コイツ彼女の前で何言ってんだ…。
「うん、ダメか?」
「…別に…好きにしろよ。」
「うん、ありがとう。」
「………別に…」
そんな様子を女子がめちゃくちゃキレそうな顔で見てる。
まぁ、キレそうになるわな。
「鈴暮は弁当?」
「いあ、食堂で何か買う。」
「じゃあ、行こう。」
「え、…あ、あぁ。」
グイグイ手を引っ張られるけど、後ろの女子から視線が痛い…。
コイツ…まさか天然?
その後、俺は食堂でパンを買って夏越に連れられ屋上にきた。
「鈴暮、ちょっと手にお椀作って?」
「ん、こうか?」
「そうそう、そのまま下に降ろして。」
「ん。」
夏越が俺のシャツの中に手を突っ込み子猫を抱き上げる。
いあ、別に、感じて…ない。
そのまま子猫を下ろし、俺の手の中に牛乳を注ぐ。
すると子猫が嬉しそうにそれを舐める。
「喉、かわいてたんだな…。」
「ん、だな。」
「……可愛いな。」
「だな。」
「……色っぽいし…。」
「ん?どこが?」
「あ、いあ…なんでもない。」
「?」
コイツ今、猫相手に色っぽいって言わなかったか?
とりあえず腹が減ったからパンを食う。
夏越は手作りであろう弁当を無言で食ってたが、俺はどうしても気になる事が頭を回ってた。
さっきの女子、彼女…だよな。
彼女がいたのに、何で俺なんかと飯食ってんだよ。
なんで、あの時、名前で呼んだんだよ。
いろいろ聞きたいがやっぱり聞けない。
「なぁ、鈴暮。」
ふいに黙っていた夏越が口を開いた。
「…あんだよ?」
「さっきの女子…柊って言うんだけど…。」
「…………」
「アイツの事、誤解するなよ?」
「………なにが」
「アイツ俺にくっ付いてるけど彼女とかじゃないから。」
「……ふーん。」
読み取られた…?
俺の心見られたのか…?
「あとさ、俺…」
「…ん?」
夏越がいきなり立ち上がり、俺の隣に居たのに、目の前にくる。
「俺…………好きみたい。」
「ん?」
「だから…」
「なんだよ?」
「俺………鈴暮の事、好きだ。」
しばらく、時間が止まったような気がした。