恋音
コーヒーを入れてやった、
ついでに自分にもココアを作った。
「…ほら」
「ん?え?鈴暮が入れてくれたの?」
「……他にいんのかよ」
「いないな」
「当たり前だろ…」
すげー美味そうに目を細めて飲むのを、
ただ眺めていた。
しばらく俺はベットに腰かけながらココアを飲んでいたが。
時刻が2:30になるころ、ウトウトしはじめていた。
「鈴暮、寝てて良いよ?」
「………ぅん」
「コップ落ちるよ?」
「………ぅん」
「…俺の事、好き?」
「………ぅん」
「襲っていい?」
「………へ、ぁ?」
そこで意識が戻ってきた。
俺なに喋ってたんだ…?
夏越がやけに嬉しそうにニヤニヤしている。
なんか気に食わん…。
でも、今は問いだたす事よりも。
「………寝る」
そのままベットに倒れて意識も吹っ飛んだ。
目を開くと、夏越…。
あぁ、またあの夢か…。
夏越がゆっくり顔を近づけてくる。
そのまま口付けて、隙間から舌を入れてくる。
俺も必死に奴にしがみついて、舌を絡ませる。
どうせ夢なんだ…現実じゃできないような事をしてやる。
「んっ…はぁ、もっと…!」
自分から体を擦り付ける。
もっと深く。
もっと激しく。
もっとー…。
「鈴暮…」
名前を呼ばれて目を開ける。
そこにはウットリした顔の夏越がいた。
あれ?まだ夢か…?
舌を絡ませ合ってるから夢のハズ…なんだが。
ずいぶんリアル…。
「はっ……なご、し…ゆめ?」
「…違うよ」
そこで唇を離して辺りをキョロキョロする。
えーと…夢じゃないなら、今リアルにディープキスしたと?
コイツと?
「………」
「ごめんな?鈴暮すごいものほしそうな顔で見てくるから…つい…。」
「……俺、そんな顔してたか…?」
「…うん。」
とりあえず、……死のう。
もう生きてけない。
死ぬ。
死ね。
俺がな。
「鈴暮、とりあえず、朝食、食べようか?」
「………だな」
もうなにもかも、どうでも良くなってきた。
朝食にパンと牛乳が用意されてそれを頬張る。
うん、うまい。
その後、登校時間になり夏越が着替え初め、俺も昨日洗濯されたであろう制服に着替えた。
学校に行くまでに、夏越は無言で本を読んでいた。
俺はとくにすることもなく、前を向いて歩いていた時。
「にゃー」
何処からともなくそんな声がして辺りを見渡せば。
小さな子猫が擦り寄ってきた、夏越に。
「…猫?」
「みりゃわかんだろ。コイツ可愛いな、何処から来たんだ?」
俺が子猫を抱き上げると夏越がおずおずと撫でる。
「…猫、嫌いなのか?」
「いや、普通。」
「手、震えてんぞ…?」
「あ、あんま触らないから…」
「ふーん…」
意外な一面が見れてなんとなく嬉しくなる。
子猫を抱き上げたまま、歩く。
「にゃー」
「よしよし、お前可愛いにゃー。」
なんて、つい動物好きの俺がいつもの癖でそんな事言ったら。
「……なにすんだよ」
「え?撫で撫で。」
「…俺はガキじゃねぇぞ。」
「今、にゃーって言ったじゃん」
「っ…く、癖だ」
「ずいぶん可愛い癖だな」
「…お前、マジ黙れ…」
「うん?やだ」
「っ……はぁ、もういい」
地味に疲れる。
腕の中では子猫が寝ている。
降ろすのが何となく名残り惜しくて、そのまま連れて行った。
校内では動物禁止。
そんな事、わかりきっていたので、俺はそのまま屋上に向かう。
後ろから夏越に「授業は?」と尋ねられたが。
「サボり」と言って抜け出してきた。
「にゃー…」
「んーにゃ…」
一人で猫とじゃれ合いながらいろんな事を考えた。
アイツなんで俺とちゅーなんかしたんだろ…。
ノリ?
遊び?
それとも本気?
さっぱり分からん。
「アイツ……終わったかな…?」
なんて、呟いてみる。
「にゃあ…」
「んー…?どうしたぁ?」
子猫が胸に擦り寄ってきて、思わず頬が緩む。
やっぱり、ねこはいいなぁ…。
子猫が指をペロペロ舐めてくる。
「喉かわいたか…?」
「ふにゃぁ…」
ポケットを漁り小銭を出す。
牛乳の一本ぐらいなら…。
ダルイ体をノロノロ起き上がらせて、子猫をシャツの中に隠す。
「見つかっと面倒だからな、ちょっと大人しくしてろよ…?」
「にゃあ。」
うん、可愛い。
若干毛が当たって肌痒いが、まぁこのぐらいなら…。
屋上の扉を開き、食堂へ向かった。