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秘密の花園で待つ少年 ~叔母さんとぼくの冒険旅行~

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 第一ターミナル駅を降りて、空港に着いてからは移動の連続だった。
ツアーの予約をしていたみたいで、集合時間に遅れるとかで走らされて、途中、保安警備員さんに身分証明のチェックに捕まってイライラし、搭乗手続きカウンターに着くが人込みにもまれておばさんに離されないようについて歩くのにやっとだった。
 カウンターでは、添乗員さんからいろいろ手渡され、ぼくの荷物に旅行ツアー会社の札がついていないことをチェックされて手間取った。
 並んでやっと順番が来た航空会社のカウンターでの手続きは、ぼくが子どもだったこともあり、カウンターのお姉さんが手伝ってくれた。ぼくは荷物から宿題とポータブルゲーム機と歯ブラシを取り出してウエストポーチに、宿題はおばさんの大きな鞄に入れてバックは預けることにした。
 出国ゲート前に着いて、やっと一息ついたのか、おばさんは腰に手をやってぼくに向き直った。
「これであとはここのゲートをくぐるだけよ。あと一時間ちょっとは時間があるわ。おなかはすいた?」
 ぼくは顔を横に振ると、おばさんは頷き、ぼくにチケットを渡した。どうも日本の航空券と違って、ペラい紙切れで航空券の実感がない。
「これから乗るのは大韓航空…コリアエアライン、韓国の仁川(いんちょん)空港でトランスファー…乗り換えするの。韓国まで三時間あって機内で機内食が出るから食べない方がいいわ。」
「ぼく、機内食って初めてだ!」
「飛行機に乗ったら空弁もいいけど、海外旅行は機内食よね!…で、乗る前に必要なことがあるわ。海外災害保険の加入と現地の現金に換えること!」
「え…保険って、入るの?てか、まだ入ってなかったの?!」
「いろいろと忙しかったし、空港で簡単に入れるわよ。携帯を海外モードに設定して、充電はしてある?…そう、んじゃ、免税店をすこし巡ってもいいかもね。面白いわよ。外人さんのお土産用の店とか普通に本屋とかいろいろあるよ。」
 おばさんとATMみたいな機械で保険に加入して、換金所でぼくは悩んだ末にイギリスポンドに九千円分両替したあと、免税店を二人で歩いた。ファーストフード店や本屋、携帯会社のブースに和風の雑貨の店、カメラ屋が結構大きくて驚いたけどデータからすぐに写真に起こせるのは便利でなるほどと思った。
 そして、慌ただしく出国ゲートへと走った…。
「もう、おばさんはなんで時計を見てないんだよ!」
「うっさい!まるで母親と一緒ね!しょうがないでしょ、外人に手土産は千代紙がいいとか本に書いてあったのを思い出して選んでたら、時間忘れちゃったのよ」
「友人がいるわけでもなし、忘れちゃった…じゃないよ、大人のくせに!」
 ぼくたちは出国ゲートでの金属探知機でとりあえず金属であろうものをすべて脱ぎ捨て、一発で潜り抜けると、出国審査カウンターまでまた走った。
 審査カウンターでは、『日本人用』とか書かれているところに並んで、床にラインが引かれているところで止まって待った。
「何か聞かれたら、イギリスには五泊六日で、観光旅行だって言えば大丈夫。日本人の子供だから何も言われないって!」
「うん。」
 おばさんは、ぼくに先に行くように背中を押した。僕はラインの内側へ恐る恐る進むと、カウンターの審査員らしい男の人の前へ立った。パスポートと搭乗券を渡すと、無言で男の人はパスポートを開きチラリとぼくを一瞥した。
「イギリスはどこへ、行くのかな?」
「ロ、ロンドンに観光旅行です! 五泊六日です!」
「一人で?」
「あ、叔母さんと一緒です。」
 緊張したぼくが後ろを振り返って女の人をみている様子を見て、審査員さんは頷くとパスポートにポンポンと判子を押して、にこりと微笑んで言った。
「楽しんできてくださいね。」
「あ、ありがとうございます!」
 審査員さんが笑ってくれたおかげで緊張が解けたみたいで、ぼくも一緒に微笑んだ。パスポートを受け取ると、おばさんが後ろから来るのが見えてカウンターの後ろへと回った。
 おばさんが一言二言、何か話しているのが見える。落ち着かない様子で見ているぼくを見て微笑むと前に向きなおして再び話し、パスポートを受け取りぼくの方へまっすぐ歩いてくる。
 おばさんは再び微笑むと、ぼくの頭にポンと手を載せて撫でる。
「よっし!あとは搭乗ゲートまで走るわよ!」
「えー、またぁ?」
「えーと、案内ボードには…あ、これね。九時過ぎ大韓航空の搭乗口!行くわよ!」
 搭乗口近くまでくると丁度、アナウンスがあったようでたくさんの人が並んでま少しずつゲートを通っている。
「あら、間に合ったみたい!」
「もう!こんなギリギリな移動、もう嫌だからね!」
「はいはい、わかったって」

「おはようございます!当機ご利用ありがとうございます」
 ぼくたちは細い通路を渡って、機内に乗り込んだ。客室添乗員さんが入り口付近に立って日本語で微笑んだ。
「日本語だよ。おばさん」
「日本人?…でも名札は日本名っぽくなかったわね。さすがコリアンエアライン…日本語の通じるCAまでいるのか…」
 機内はとても騒がしかった。
 どの客も落ち着かないのか、荷物を棚へ押し上げたり搭乗券を見ながらウロウロとしていたり、もう毛布を広げている人までいる。今、韓流とか流行っているせいかオバちゃんの団体が多く、ほとんど日本人っぽいけどたぶん韓国人も中にはいるんだろうな…。
 ぼくたちも毛布とイヤホンを一つずつ貰って、座席を探した。
 エコノミー客の僕たちは機内の中あたり、しかも真ん中の三人用の座席だ。狭い座席に通路側をぼくに座らせておばさんは言った。
「携帯電話は電源から切りなさい。マナーモードも駄目よ。アラームも切って置いてね。ゲーム機も使っていいけど、離陸してからしか使えないし通信機能は絶対使っちゃ駄目よ。飛行機の機器に影響して墜落しちゃうから。」
「えー。ホントに~?」
「こら!冗談に取っちゃダメよ!見つかったら近くの空港に降ろされて、莫大な罰金を取られるんだから!一度そういうネットニュースを見たことあるわ。」
「へ、へぇ~…わかった気を付ける。」
「安全のしおりがあるからちゃんと読んでおきなさい。CAが出発前に案内アナウンスを流すけど、非常口の確認くらいはこれからは自分から気を付けるようにするといいわね。ホテルとかも特にね。」
「九死に一生スペシャルって番組でホテル火災からの脱出って、見たことがある!」
「そうよ~どこに非常口があるか知っているか、見ていないかで、死亡フラグを立てずに済むのよ~」
 座席の背もたれにモニターが付いていて、韓国語で何やらいろいろ書かれている。タッチ操作で動くらしくいろいろ触って日本語に切り替えみると、緊急避難用非常口の位置、救命ジャケットの装着の仕方などまで案内があった。
 そればかりか、飛行機の現在緯度、高さ、温度までわかるようになっていて、退屈しのぎのためか色んな映画まで見れるようになっている。
「す、すごいね、おばさん!ハリウッド映画とか見れるよ!」
「でも、ハングル語と英語訳しかないのね~日本語は字幕か…あんたには見づらいんじゃない?」
「それでも、十分すごいと思うんだけど…」