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秘密の花園で待つ少年 ~叔母さんとぼくの冒険旅行~

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「曲がり間違っても城ですもの。それも要塞という名のね。大昔、何度も戦争を耐え抜いてきたって風格があるわね~」
「城って聞くとちょっとイメージが違う。要塞とか牢獄とかの方がしっくりくるね」
 チケット売り場で少し並んだあと中へ入ると、入り口前にすでに土産屋が万理おばさんを誘惑したが、長くなるので強引に中へと引っ張り、意外と狭い門を通り抜けて、チケットもぎり近くで有料の音声ガイドを一つ借りて、二人で聞きながら歩くことにした。
 中心の建物を中心に、要所に建てられた塔を囲う内壁が立てられ、そのさらに外壁が重なって、その外側に外堀が広がる。
 外壁の内側には、いくつもの階段があって塔に上り塔から塔へと渡って回った。
 ある所では貴族の暮らしを説明し、展示された塔や拷問器具が展示してあったり、牢獄であったという塔の壁には、囚人たちによる嘆きや訴えが彫られてあった。

 中でもエドワード四世の子、十二歳のエドワード五世と九歳のシュルーズベリー公リチャードの兄弟が叔父に投獄させられ、のちに非嫡出子として叔父がリチャード三世として即位。その後、子供たちの姿は塔から消えたという事件が一番興味を引いた。
 ロンドン塔の中の謎の一つとして、大きく展示されていていくつもの可能性を残していながらも、礼拝堂に続く階段の下に隠されていた二人の子供の骨が、彼らの悲劇を如実に物語っていた。誰にも擁護されず、暗い塔へ監禁され、忘れ去られるままに姿を消し去られた二人の兄弟。ぼくと同じ歳の子供が、このような運命に遭っているという現実に恐れおののいた。

 処刑場跡地を見て、万理おばさん念願のジュエルタワーを見て回り…(さすがにいろんな宝石があったが、大半は財政難のために手放したという骨組みだけの王冠や王笏が多かったことに落胆は大きかったらしい…)最後に入った中央のホワイトタワーと呼ばれる城塞では、ヘンリー八世の鎧や武器が展示してあった。
 ファンタジーゲーム大好きなぼくと万理おばさんは大はしゃぎだ。
「本物だ!本物の剣や盾だよ!いろんな形があるんだなぁ」
「馬の鎧も展示してあるわね。馬と人との対比もできていて面白いわ。うわっ、ちょっと!見て!ヘンリー八世の鎧!これっ、なんでココ、もっこりしてるのよ!ほら、鹿朗!」
「ま、万理おばさん…そんな大きな声で、それも指をさして言わないでよ…笑われているだろ!」
「戦闘ってそれほど興奮するもんなのかしら…?それでもあれはないわぁ…それほどでかいのかっつーの。」
「だからっやめろよ!もう!子供かよっ」
 その鎧の前から引きずり出し、次の展示室へと移る。階段を上にあがったり、下にさがったりしながら大砲や大型の武器を見て回り、実際に剣の重さを体験するコーナーや大砲の傾きによる飛距離の比較する展示や、武器の歴史などの展示を最後に土産などのショップに続いていた。
 万理おばさんとぼくは、馬と鎧騎士を連結できるフィギアをそれぞれ買い、他にも日本語で書かれたロンドン塔ガイドブックの冊子と剣型のペーパーナイフ、ヘンパチ(ヘンリー八世のこと。万理おばさんが名付けた…)の肖像画のノートを手に、ぼくたちは大満足でロンドン塔を後にした。

「いやあ、塔を見て回ったときは、もう厭きて帰ろうかと思っていたけど、最後のヘンパチ展はよかったわ~」
「楽しかったけど…へんぱち…って…。そんなあだ名、イギリスの国民に怒られるよ。絶対。」
「どうせ日本語なんてわかんないわよ。さて、そろそろ暗くなってくるから、ご飯を食べて帰りましょう。そうね、もどってコンヴェント・ガーデンで買い物しながら食事でもするか。」
 そうして、ぼくたちは地下鉄をサークルラインを使ってコンヴェント・ガーデン駅に降りたころには、辺りは薄暗く、地図を片手にアップル・マーケットを探して少し歩く。
 アップル・マーケットは手作り雑貨やアンティークの露店の並ぶ屋根付きマーケットだ。ほかにもオーガニック食品店や紅茶の店、雑貨屋なども並んでいる。
 ○寺院の前では大道芸人が観光客にショーを見せ、パブのテラスで駆け出しであろうオペラ歌手が自分のCDを並べて歌を披露していた。
 ぼくたちはそれを見ながら、万理おばさんはビール、ぼくはオレンジジュースで乾杯しながらフィッシュ&ポテトとローストビーフを楽しんだ。
 ホテルに戻ったころには、もうフラフラでシャワーも意識虚ろに、ベットに転がるとすぐに眠りの縁へと転がり落ちたのだった。

つづく
<予定 第2章 夢の中の薫り>