ファントム・ローズ
中学生のときから付き合い出しのも椎名アスカ。
なら引っ越した記憶のある少女はだれだ?
なにかが可笑しい。
自分の記憶が改変されているなんて、それに気づくと本当に不快で歯がゆい。おそらく改変されているのに、それがどこでなにをどのように改変されているのかわからない。けど、心か魂かはわからないけど、どこかには記憶されてるんだろう、頭では思い出せないだけで。
「入るぞ」
いきなりだ。鳴海愛は閉ざされた正門を軽々とよじ登って飛び越えた。
ったく。
僕もあとを追おうとして正門の上にジャンプして手を伸す。縁に手を掛けて体を持ち上げようとすると腕が震えた。筋力不足だ。華奢そうな体をしてるのに、鳴海愛はどうしてあんなに簡単に上ったんだ?
どうにか正門に登り、ジャンプして地面に下りた。少し足がしびれる。
鳴海愛はすでに遠くを歩いていた。僕がついてこないってこと考えてないんだろうか?
「どこ行くの?」
小走りで追いつき彼女の横顔に話しかけた。
「着いてくれば思い出す」
わかるじゃなくて思い出すか。つまり僕がってことだよな。
見えてきたのは滑り台だ。もちろん遊んだ記憶はあるけど、なにか特別な場所だったか?
急に足を止めた鳴海愛が僕を見つめてきた。ちょっとドキッとする。
「君に……というより、椎名アスカによくちょっかいを出す子を覚えてないか?」
「アスカに? そんなヤツいたっけ……」
男子にたまにからかわれてた気がする。僕が止めに入ると殴られた。そいつの顔はよく覚えてない。
再び歩き出した鳴海愛は滑り台を通り越し、その裏手にある壁のそばにやって来て、ある場所を指差した。
「あの子も一途で片思いが長い」
なんの話?
僕は鳴海愛の指先を見て驚いた。
作品名:ファントム・ローズ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)