CROSS 第2話 『9番目の異次元ステーションでの災難』
その光景をステーションの司令官は、ただ一人、ぼうぜんと見て
いた。だが、ひまをもてはなした様子の一部の怪物たちが、ぼうぜ
んとしていて無抵抗の状態でいる司令官に襲い掛かった。まず怪物
たちは、司令官の両腕を食いちぎった。両腕を食いちぎられた司令
官は、ぼうぜんとしたまま後ろに血を撒き散らしながら倒れた。倒
れこんだ司令官の体の上に、次々と怪物が覆いかぶさり、あっとい
う間に骨までバリバリと食べてしまった。
司令官が何の抵抗もせず完全にぼうぜんとしていたのは、2つの
理由がある。一つ目はもちろん、避難している人々が怪物たちに血
祭りにあげられていること。そして2つ目は、さきほど脱出艇が爆
発した原因は、味方であるはずの艦から発射されたレーザー砲の直
撃によるものだったのだから……。
そのステーションのクルーは、無我夢中でステーションの通路を
走っていた。そのクルーは、もう数少ないステーションの生きてい
る人間だった。そして、ドアの上に『第3通信室』と書かれた部屋
にできるだけ物音を立てないようにして入り、中からしっかり鍵を
しめた。(あの怪物たちが、ドアを破壊できないほど弱いとは思え
ないが……。)
通信室に入ったクルーは、まず部屋にあった大きめのディスプレ
イがついた通信装置を立ち上げた。『通信可能』という文字がディ
スプレイに映し出されると、すぐにクルーは小さい声で必死に、異
次元無線で助けを求め始めた。しかし、何度呼びかけても応答は無
かった。
救援要請を10分以上続けて、あきらめたのか、クルーは腰にあ
ったレーザーピストルに手をかけた。怪物たちに残酷に殺されるよ
りかは、ましだと考えたのだろう。腰のホルスターからピストルが
さあ出ようとしたとき…、
作品名:CROSS 第2話 『9番目の異次元ステーションでの災難』 作家名:やまさん